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第4話
「起きたか」
「…」
「ごめんな…俺どうかしてた。お前が最近忙しそうで中々一緒にいられないからさ」
「そう…他の人と何かあるのは構わない。けれど出来れば家はやめてほしい」
「もう二度としねぇよ」
このやり取りをその後も何度も繰り返すことになるのだ。あまりにも続くから感覚が麻痺してしまった俺はおかしくなって気付けば言いなりになってしまっていた。俺の友人にも手を出したこともある。おかしな事に何人かはあいつに惚れてしまうのだ。その中でそいつに落ちなかったのも何人かいてそいつらに必死に別れるよう説得はされるのだけれど俺は受け入れられなかった。
そんな俺を見かねて友人一人が近くに住む俺の弟に連絡したことで謎の共同生活が始まった。
弟がいようがいまいがあいつは多くの人間を連れ込み弟の前で見せつけるように楽しんだらしい。弟は激怒するけれど結局あまりの光景に何もできないでいたのだ。けど弟を責めることもできない
「おい!お前大丈夫なのか?顔色酷いぞ」
「へ?そうですか?最近寝不足かなぁ?へへっ」
「お前っ!いい加減にしろよ!」
初めて上司の大きな声を聞いてびっくりする。言葉を発さない俺の手を掴み引き摺るように店舗裏に連れて行かれた
「何なんですか!?仕事があるのに!!」
「何を言っているんだ?お前の仕事は全て終わっている。お前が終わらせただろ。急ぎの仕事は当分無い。今日は店休日だ。全店舗副店長以下は休めという通達が出ているだろ。気付かなかったのか?俺以外誰もいないこと」
「へ?」
言われてみてやっと気が付いた。
「俺は会議があるから来ていた。お前は休みだ。今日だけじゃない。勤務表まるっきり無視すんな。お前には連休をやっていたはずだ。」
「…やだ…」
「は?」
「休みたくない!!いやだ!やだ!!」
「おい!どうしたんだ」
「いやだいやだいやだいやだ!!!!」
泣き叫ぶ俺の唇を塞ぐ上司の行動が意味がわからなくて…けどもう力も入らなくてその場にへたり込んだ
「なぁ。お前は何を抱えているんだ?話してくれないか?俺じゃ頼りないかもしれないけれど…俺もう上がりだから家に戻りたくないなら飯付き合ってよ」
上司からの誘いを断れなくて…いや…正直言うと断りたくなかった。今日も帰宅したら変なパーティーがあっているだろうから。
弟は家にいると言ってくれたけど数日前に無理矢理に自宅へ帰ってもらった。
弟までどうにかなってしまったら俺はきっと立ち直れない。弟は渋い顔をしてごねたけど家の合鍵を渡す条件で納得してもらった。
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