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第17話

「店長…えむくん…すいません…見苦しいところを見せて…」 「いや…今は同性婚も許されたとはいえまだお母様みたいな人の方が多い世の中ってのは変わってない…何も間違っていない…」 「…普通って何でしょう…俺は…わからない…どうして少数派だとそうなるんでしょう…店長もえむくんもとっても素敵なのに…」 「光海さん。俺ちゃんと、名乗ってなかったですね。山百合。山百合 灰簾(かいれん)です」 「山百合…灰簾…え?」 「思い出してくれましたか?」 「…全然雰囲気が違うから…わからなかった…そうか…貴方は変われたんですね…」 「はい。あなたのお陰です」 よく見ればわかったんだ。どこかで見覚えがあるとは思っていたけど…そうか…あの山百合さん… 山百合さんは俺の初めてのお客様だった。初めて接客した人でどっちかというと地味でお世辞にもお洒落とは言えなくて何でわざわざここに来たのかわからないくらい服もこだわりが無さそうだった。 「今日は…どんな感じでお探しですか?」 「…見てるだけです…すみません」 そう言うと足早に店を出ていった。俺のアプローチの仕方がおそらく嫌だったんだろう。お客様には接客して欲しくない人も多いから。 それを見ていたその当時の店長が来てくれて気にするなと言ってくれた。けど妙に気になってて… 「今日はお客様も少ないからもう休憩行っておいで」 そう言われて外に出るとさっきの人がいたのだ。彼の隣にはすらっと背の高い男の人がいた。その人はとてもお洒落で凄くきれいな顔をしていた。 彼らは俺には気付かなくて盗み聞きみたいになってしまったけれど会話を聞いてしまったのだ 「ねぇ。(れん)」 「ん?」 「社会人になったんだしその格好どうにかならない?恥ずかしいんだけど…まぁ…夜の相性はいいからそこはいいんだけどさ…会うのもう家だけにしない?」 綺麗な笑顔でそう言ったのだ。そう言われ俯いた彼の姿を見て自分と重ねてた…見た目で決める人なんて碌な人でない…俺もそれで痛い目にあってきたんだ…声をかけるのも違うと思ったんだけどつい声をかけてしまった。 「あの…」 二人は同時に振り返って首を傾げた。俺は自分の笑顔が武器な自覚はある。だから笑顔で語りかける。 「えっと…お二人はお友達ですか?」 「…っ…」 男が息を呑んだのがわかった。 「友達…だよ」 「そうなんですね。お似合いだから恋人かと…」 「え?嫌…えっと…」 「クスッ…大丈夫ですよ。俺もなので。」 そう言うと男の目の色が変わる。この目は見たことのある俺を欲しがる顔だ。 「でも彼もっと素敵になると思うんです。俺そこで働いてるんですけど…まだ新人だからコーディネートの勉強中で…よかったら彼を貸してもらえますか?」 首を傾げて俺より少し背の高い男を上目遣いでベッドの上で誘うように見つめる 「…っ…あぁ…いいよ」 「じゃあ…よろしくお願いします。あ。名乗ってなかったですね。俺光海っていいます」 ネームプレートを見せて名乗り彼を促して店に戻ると店長がびっくりしてた。側に来て耳元で 「何かあったのか?」 「いいえ。でも…」 「あの…」 「俺のおすすめ持ってきますね!お待ち下さい!」 店長を引き連れてバックヤードに行き状況を説明する。店長は俺の性癖を知ってるし偏見は持たない人だ。逆に店長の闘争心に火がついたようで俺にいくつかアドバイスしてくれて持っていく。 試着してもらって出てきた彼は本当にさっきの人とは別人かって言うくらいの出来だった 元がいいのだ。すらっと足が長くて華奢過ぎないどこか色気のある人。 それには彼の彼氏も驚いて息を呑んだ。 「こんな感じでどうですか?」 「すごい似合ってる…」 「良かったら…こっからは俺の趣味なんですけど…髪もいじらせてもらっていいですか?」 彼は彼氏を見ると 「いい?」   小さく呟いた 「いいよ」 彼氏は期待に満ちた表情で彼を見た 「お願いしてもいいですか?」 「はい!」

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