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第18話
そうして数分。彼氏には一旦外してもらって彼を広めのフィッティングルームに入れる
「大丈夫?緊張してますか?」
「大丈夫です」
「余計なお世話かもしれませんが…貴方はあの人には勿体ないと思います…」
「え?」
「だって貴方はとても綺麗な人だから…」
「本当は…別れたいんです…けど…俺こんなでしょ?だから…この人と別れたら先がないと思って」
「ううん。大丈夫。あなたにはすぐに現れます。俺が魔法をかけます。こっちから引導渡しちゃいましょう」
そういって髪をセットしていく。元々俺は美容師になりたかった。けど親が反対したからその道は諦めて普通の大学に行った。けどやっぱり人の髪をいじったり化粧を施したりするのが好きだ。特に自分に自信の無い人を変身させて笑顔になってもらうのが好きなのだ。
同時にファッションにも興味があった。だから大学在学中くらいは好きなことをしたかったからこのバイトを選んだんだ。
終わりに近づくに連れて彼の表情が明るくなるのをみて嬉しくなった
「本当はコンタクトにした方がいいんだけど…今日は仕方ないですね。よしっ!出来ました!」
「すごい…ありがとう…ありがとうございます…」
彼はポロポロと涙を流した。
「貴方がこれから先自分で選べるように。俺は応援しています」
俺のできない事を彼に託す。どうか…貴方が幸せでありますように…そう思い背中を押した
待っていた彼氏は口をあんぐり開けて彼を見つめてた
「どうかな?」
「すごい…似合ってるよ…じゃあ…行こうか?」
「え?お金払ってないよ」
「俺からのプレゼント」
「そんな…いいのに…」
彼は困ったように俺を見た。そんな彼に小声で語りかける
「手切れ金にしては少ないけれど貰っちゃいましょう」
そう言うと彼は小さく頷く。
俺の声は彼には聞こえてない。そんな相手は照れくさそうに彼に言う
「俺がしたいから…受け取って」
「あ…ありがと…」
「うん。あの…光海さん…本当にありがとうございました」
「いいえ」
ニコリと微笑むと彼氏はまた喉を鳴らした。少し微笑みかけただけで獣のような目をして厭らしい目で見るような男なんかに彼は合わない…勿体ないのだ。だったら…こっちもやることやる…
「会員カード作りませんか?」
彼に話しかけると強く頷いた
彼が記入している間彼氏と話す。彼には聞こえないくらいの声で
「今日は本当にありがとうございました。変身させられて楽しかった…ふぅ…」
物憂る気にため息をつく。
「どうかした?」
「いいえ。俺男運なくて…だから…貴方みたいな素敵な人だったらいいなぁって…思っただけです…」
そっと彼の指先に触れながら上目遣いで見つめる
「え?」
そしてきゅっと握る
「すいません…何でもない…です…ごめんなさい」
それをそっと離すと微笑んだ。
「今日は何時まで?」
「今日は19時ですね」
「そっか…わかった。」
それと同時に彼が書き終わる。
「山百合さんとおっしゃるんですね…きれいなお名前ですね」
「ありがとうございます。」
「貴方にぴったりです。荘厳で飾らない美しさ…それに…灰簾は宝石からきてますよね?」
「そうです。母がそういうお仕事をしててそこから来たみたいです。石言葉からつけられたそうです。それに恥じない自分になりたい…」
「あなたなら大丈夫…俺そこは自信持って言えますよ。だから…ね?」
「はい」
「簾。行こう」
そう言ってさっきは少し距離のあった二人の間には距離がなくなって手を繋いで彼氏が荷物を持って寄り添って歩いていった
「光海。お前余計なこと考えてないよな?」
「余計なこと?」
「…いや…何でもないならいい」
店長は何か気づいたのだろう
俺が何をしようとしているのか…
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