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第19話
「お疲れ様でした」
今日はお客様が少なかったので時間通りに上がった。
店を出てすぐのことだった
「光海さん」
「あ!貴方は…昼間はありがとうございました」
山百合さんの彼氏だ。実はこうなることは予想できてた
「あれ?山百合さんは?」
「今日は夜勤でね。あいつ看護師なんだ」
「そうなんですね。昼間はゆっくり休みたかっただろうに…健気ですね。彼氏に会いたいって時間作ってくれたんですね。貴方が好きになるのもわかります。可愛いですし」
「まぁね。でもさ」
「どうかしました?」
「あいつ…他にも男いるみたいでさ…」
寂しそうなふりをしながら男が言う。その目には欲情が浮かんでいる。
そもそも山百合さんがそんなことをするはずはない。フィッティングルームの中で色々話を聞いたんだ。それは彼氏の方だって。自分が仕事の時他の人と会ってるって。見たことがあるらしい。知らない男とホテル街に消えていくところを…
それに部屋でいくつも痕跡が残っていたみたいだ
元々彼氏は男にだらしないみたいで取っ替え引っ替えは当たり前のこと。自分に声を掛けたのも興味本位からだったみたいだ。経験のない人とやりたかったっていう下衆い理由。けど初めての相手だからなかなか強く言えなくて付き合ってきたけどもう疲れたって言ってた。いつ別れを切り出そうか迷っているって言ってた。だから俺は…。あの子の幸せのために…
「他にも男ですか?こんなに素敵な人がいるのに!?そんな…人は見かけに寄らないですね」
大袈裟に演じて見せる。
「だからさ…慰めてよ…光海さん…」
そう言うと男が俺に近付いて俺の手を握って引き寄せた
「…俺でいいの?」
「…君がいいの…」
出た…こういう男の…常套句だ。
「…いいよ…行こ?」
彼の腕に腕を絡め体を擦り寄せる。男はだらしない顔で笑ってた
そのまま男の家に連れて行かれてすぐに抱かれた。あまり上手くないのにいいふりをするのは得意だ。
こういう男は大体そうだ。あまり技術はないくせに自分のことを信じて疑わない。めちゃくちゃにプライドを傷つけてやれば自信喪失する…
「よかった?」
「…みんなすごいなぁって」
「え?」
「こんなに下手なのに気持ちいい振りしてくれてるんでしょ?」
「は?」
「くすっ…これまで寝た中で一番酷いかも…顔はいいし持っているものもいいのに…すっごく勿体ないね。俺が教えてあげる」
そう言うと男を押し倒して俺が覚えさせられた技術を全て叩き込む。この間まで付き合っていた男が実は男優だったのだ。好きにはなれなかったけど彼は優しかった。教えるのもうまい。けど従順過ぎる俺に愛想を尽かした。たまにはわがままも嫉妬もして欲しかったみたいだ。とはいえ俺以外にも元々相手は多数いたんだけど…
「あんたこっちの方が向いてるよ!可愛い顔…いい子だねぇ。綺麗なネコちゃん」
男はだらしなく俺のものを加えこんでいた
「もっと…欲しい…」
「そのだらしない顔見てもらおうね。いい子だねぇ」
そう言いながら動画を撮影してあるサイトに上げた
「いいよぉ。あげる…その前に…今いる彼氏たちみ~んな切っちゃおっか?ほら」
スマホを渡すと律動している俺の下で啼きながら頷いてみんなに別れの連絡を入れさせた
「みせて」
その中にはちゃんと山百合さんもいた。よかった…これでいい…
その後数時間。まだ俺を欲しがりヒクつく男をおいて部屋を後にした。
途中すれ違った男たちはギラついた目で男の部屋に入っていった。直ぐにあいつの矯声が聞こえてきた。それを聞いて北叟笑んでその場を後にした。
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