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第23話
「特別‥」
「俺が入社した理由聞いたら引くぞ。お前は」
「引く?」
「実は俺さ、他にいくつか内定決まってたんだよ。そんで色々と決めかねてたときあの店に寄ったことがあるんだ」
「あぁ。それは覚えてます。すごく目立っていたから」
背も高くて顔もよくおしゃれで芸能人みたいなお客様がいた。
その人が店長だ。ただフロアを歩いているだけなのに他の売り場の人たちも彼に釘付けになっていた。
うちの店に入ってきたときはびっくりしたんだ。身につけているものがうちのテイストと全然違うんだから。
だからこそコーディネイトしてみたくてウズウズして声を掛けたのだ。
店長はあの頃バイトである俺のアドバイスを真剣に聞いてくれていろいろ試してくれた。
スタイルがいいからどんなものでも似合ってすごく楽しくて他にお客様もいなかったからかなりの時間拘束してしまったのだ。
「それまで挑戦してこなかった服装だし正直興味なかったんだ。けどお前がいたから‥足を踏み入れた。俺のタイプど真ん中のお前がいたから‥話したかったんだ」
「えぇ!!!」
「そんですごくキラキラした笑顔で次から次にコーディネイトしてくれた。その表情が堪らなく可愛くて‥惚れちまったんだ…そんで…どうしてもお前と働きたくて採用試験を受けたんだ。運良く採用されてお前と同じとこになれて教育係にもなってくれた。関わりが増えるともっともっとって思ってたけど…お前に恋人がいるということは知ってたしそもそも同性だしと思って諦めていて…せめて一緒に働くことで側に要られたらそれでいいと思ってたんだ…」
「それじゃあ…」
「結構な期間片思いしてんだよ。お前にな」
そう言うと店長は照れくさそうに笑った
「長年の片思いを拗らせてるのかな?そうなるとあの人よりたち悪いかもしれないな…なんか悪い…」
バツが悪そうに頭を掻いた店長のその姿が何だかとても愛おしく感じたのは俺が今弱っているからだろう…
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