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第28話

母にそんなことがあったなんて知らない。けれど… 女なのに男に…言い方悪いけど負けるって凄くきつかったろうな… 母は俺が言うのもなんだがとてもきれいな人だ。母の友人たちは声を揃えて言うんだ。凄く人気があったって。今も変わらず綺麗で羨ましいとも言ってくれる。見た目もいいのに性格もいいなんて素晴らしいって… そんだけ蝶よ花よと愛でられてきたのだ。元々プライドの高い母には男に好きな相手を盗られるなんて…屈辱だったろう だからあれだけ声を荒らげるのも…まぁ理解したくないがわからなくもない もし俺が同じ立場だったなら…想像するだけでゾッとした。 けど思い返せば母はいつもヒステリーなわけではない。俺や菖蒲が困っていたら何も言わずそっと手を差し伸べてくれたし俺たちに愛情を注いでくれた。 頑張ったら褒めてくれるし間違ったら叱ってくれた。 そんな当たり前のことが出来ない親もいる世の中でそれができる人だった。結局は自分の親だ。嫌いにはなれない。 母が同性愛を許せないからといって言うことを聞いて無理に女性をパートナーに選ぶのなら…それこそ本末転倒ってものだろ?母みたいに傷付く女性が出てしまうのだから。 考えても仕方ないしまだ体も本調子ではないのでそのまま眠っていた。 店長に無理を言って明日から復帰するのだ。体を休めなければ… 翌朝早く目覚めて外を散歩することにした。新しい家は前のところから割と近くて生活圏はそう変わらない。灯台下暗しというものなのか敢えてそうしたらしかった。 今は法律も変わってけいくんみたいな人への罪はとても重くなった。特にあの人は俺以外に多数の被害者を出しているわけだからおそらく長く出てこれないから大丈夫だと思うが念の為ってとこなのだろう ここに決めたのは母だ。俺のことを考えて悩んで決めてくれたらしい。 家具の配置なんかも俺が使いやすいように悩んで俺好みの部屋にしてくれたのだ。 「やっぱ…母親だな…」 一旦帰宅するとドアノブに袋がかかっていた。 中身は俺が調子が悪いときに好んで食べていたプリンと飲み物。それと一緒に手紙も入っていた。母が持ってきてくれたのだろう 内容はあのときの謝罪と俺の体を気遣う内容だった。まだ会うのは俺に負担がかかるだろうからこれだけを残したらしかった いつになるかわからないけどまた一緒に話せる日が来ることを願うしかない
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