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第30話

用を足し出ると人にぶつかってしまった 「すいま…」 「…竜胆…」 「…」 「久しぶりだな」 あいつと付き合う前に付き合っていた奴と出くわしてしまった 「相変わらず綺麗な顔してんね」 そう言って手を伸ばしてきた。その手を叩く 「さわんな…」 「そんな怖い顔して。勿体ないぜ。顔だけはいいんだからさぁ。あんなに好き好き言ってくれた可愛いお前が見たいなぁ」 確かに好きでもないのに好き好き言ってた。そうしないと媚薬を無理矢理飲まされ酷い目に遭うからだ。 言わなければ薬漬けにされる。媚薬に浮かされた俺は何もできなくなってこいつの言いなりになっていたのだ。 「俺の人形のままでいてくれれば幸せだったのにねぇ」 こいつは俺を人として扱わない。扱われたことがない。体温があって会話ができる玩具としか思ってない。 人としての尊厳をこいつは全て俺から毟り取っていく。でもあの頃の俺もこいつがいないと生きられないと思いこんでた。 「また俺のお人形になりたいだろ?」 「…」 なりたくないのに言葉が出ない。 その時温かいものに包まれた 「うちの子に何か用?久しぶりだね」 「藍くん…」 「まだそんなことしてんの?いい加減落ち着いたら?それとも…またあそこに行く?」 「…藍くん…今の君のって…これ?」 「そうだよ。なにか文句ある?」 「…なんで?俺の方が藍くんを愛してたのに!」 「は?…ねぇ。自分の立場わかって俺と喋ってる?」 「…ごめんなさい…」 「もう二度とこいつに近づくな。できなければ…わかってるだろ?」 「…っ!」 あいつは青褪めて走り去っていった 「店長…」 「ごめん…あまりにも遅いから心配になって…」 「あいつと…知り合い?」 「あぁ…お前が欲しくてあいつを騙してお前を捨てさせたんだ…」 「…え?」 「あいつは…そういった店で出会ったやつで…」 店長から聞く話はあまりにもすごくて全く言葉が出なかった。俺が山百合さんのときにしたこととはまた違った感じのおしおきを彼にしたようだった 「…うわぁ…」 「引くなよぉ…お前のことになるとどうかしてるんだって。お前のことが好き過ぎてやり過ぎた…」 「店長…俺のためにそんな犯罪スレスレのことなんて…もう…なんなんですか…」 「ごめんな…あんなこと言っておきながら裏では…」 「ううん…ありがと…俺のことを考えてくれて…俺もどうかしてるんです。そんなことしてもらったことないから…」 そっと背伸びして店長の頬に口付けた 「おまっ…」 「店長真っ赤…俺今酔ってるんで…もっかい…ちゅーしよ?」 「…光海…酔った勢いはやめよう。またゆっくり…な?」 そう言われてなんだか恥ずかしくなった 「…すいません。帰りますね。久しぶりだったから飲みすぎた」 「待て。送る」

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