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第35話

そうして暫く甘い蜜を与え続けた男は俺に夢中になった。 そんな男を俺はあの店の元締めである力のある店に売った。 そこでは店以上のことを要求される。そしてある年齢になると捨てられる。その後は保証されない。 通常はそいつらに全て任せるのだがあいつの調教は俺がした。もう二度と光海さんに近付こうという変な気を起こさせないために。 しかし…甘かったようだ。まさかたまたま出会した光海にまた手を出そうとするなんて… 念の為そいつが立ち去ったあと直ぐに関係者に連絡した。 もう二度と目の前には現れないはずだ 光海の怯えた表情はもう見たくない…諦めたような表情も… 今になってこうして隣に立っていることがとても嬉しくてけれど少し切なくて…申し訳なくて… この人を笑顔にしてやりたい…そう思うけれどきっと彼は恋をするということはできないのかもしれない。 いつか好きでもない相手と過ごすようになって作り物の笑顔を浮かべて生きていくのかもしれない… せめてその相手がこれまでの人間とは違う善良な人だといいと思う。 その相手に俺を選んでくれたら嬉しいけれど俺の思いを押し付けるのも違う気がして今一うまくできない。 こんなに不器用な人間ではなかったはずなのに…彼に出会ってから日々が大切で暖かくて… だからこそ失うことが怖くて…踏み込めない… 「店長?」 「あ…ごめん。考え事してたよ」 「お疲れでしょ?俺大丈夫ですからここでいいですよ」 「いや。お前のこと考えてた」 「俺?」 「あぁ…あのさ…」 「はい。」 「俺…やっぱお前が好きだわ」 「ありがとうございます」 「だからお前が苦しいと俺も苦しいし、辛い顔してると心配になる。笑ってたらこっちまで嬉しくなるし照れてたら可愛いと思う。お前にいつか好きという感情が芽生えることがあるのなら応援したいと思う。お前は幸せになっていい。これまで色んなことを経験して傷付いてきた。その分の幸福がお前には必ず来るって思う。それをさ俺は側で見守っていたい」 店長は俺を真っ直ぐに見つめながらそう言ってくれた

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