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第43話
森side
「さてと…取り敢えず…開店準備しましょうか。伊路ちゃん」
「りょーかーいです。副店長!その前にもう一回…」
こいつはキスもうまい。それだけで砕けそうになるが悔しいから秘密だ。
「おっはよーございまぁす!!」
準備を始めたらもう一人
「おや?でーちゃん?お休みでしょ?」
「うん!けど今日は店長休む気がしたから来ましたぁ!」
でーちゃんこと出野口さんは主婦社員さん。まだ保育園に行くような子供もいる。ちなみに子供は5人いる。初めて聞いたとき息が止まるかと思った。
いや…だって見た目小学生よ?小さくて可愛くて独特のアニメ声で。それがママ?年齢にも驚いたけどその話はご法度だ。
「それにこの間ミントが熱のとき店長代わりに出てくれたから恩返しぃ。光海くんも無理させたくなかったから」
「ミンちゃんもう平気なの?」
「うん!うちの子ら回復普通の人よりずば抜けて早くて。だから来たぁ」
「そう。良かったわ。助かる。じゃあ私は一旦ダメ人間に電話入れるわね。お前はくるなぁ!って」
「あははっ!宜しくお願いします。私達は準備してきすねぇ」
でーちゃんはスーパー社員さん。シフト意外の全ての業務に携われる会社独自の資格を持っている。だからでーちゃんがいてくれれば百人力だ。
本人が拒否しなければ店長だけでなくエリア統括…はたまた社長なんかにもなれる凄腕スタッフなのだ。
それで今の電話なのだけど…何だか安堵していた。りんちゃんが寝坊できるくらい店長といることで癒やされたということに。
その相手に店長を選んでくれたことに…
入社する前から私はりんちゃんの存在を知っていた。あのときの扱いは吐きそうなくらい気持ちが悪い。
同じ籠の中にいたのだ…綺羅びやかな衣装を着せられて見世物にされて…誰より目を引く美しい花だった。
その美しさに魅せられ狂っていく人を幾人も見た。私は運良くいい人に拾われたけれどあの子はどうなったのだろう…そう思っていたらあの子がいたのだ。
ステージで見せるあの妖艶な姿でなくスマートに爽やかに笑う彼の本物の笑顔。あぁ…あれは彼の望む姿とはかけ離れているのだと…
さり気なく今の状況を聞き出そうとするけれど彼はうまい交わし方を知っていた。勇気のない私は嫌われたくなくて直接聞けなかったことをこんなにも後悔するなんて…思いもしなかった…本当に…店長に選ばれて…選んでくれて…良かった…
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