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第50話

翌日も休みをくれたので朝一から店長の実家へ向かうことになった。 ちゃんとした格好で行った方がいいだろうと思って少しだけ落ち着いた格好に着替えて店長の車に乗り込んだ。 「そんな畏まらなくてよかったのに…」 「流石に店のじゃカジュアル過ぎるでしょ?」 「俺はこのまま行くけどな」 「初めて会うのに少しくらいはよく見られたいじゃん。反対されてもね」 「…っ」 「え?」 「いや…お前がそんな表情でそう言ってくれることに感動してる…」 「大袈裟なんだから…」 きっと反対されるんだろうな…あれだけ大きな会社なら俺は社会的に抹殺されかねない。過去からこれまで色々ありすぎてるから。 けど少しでも店長の株はあげたい。だって本当に素晴らしい人なのだ。今の仕事だって誇りを持ってやっていることを俺は知ってるから。人柄だって申し分ないんだから 店長の実家は趣のある日本家屋。そこにあまり似合わない自動で開く門を抜けると奥には素晴らしい日本庭園があった。 「すごい…」 「祖父さんの趣味でな。奥には池があって鯉が泳いでる」 「えぇ!!すごい!」 「後で庭行くか」 「ううん。また機会が訪れるように頑張る」 「ありがとな。抱きしめさせて?」 「うん」 重苦しい玄関の前できゅっと俺を抱きしめると意を決したように扉にて手をかけた 「お帰りなさいませ。藍玉さま」 何人もの使用人が一斉にお辞儀をする姿は圧巻だった。 「親父は?」 「旦那様は書斎でお待ちです」 「ありがとう。もう下がっていい」 機械仕掛けの人形のように皆同じように同じタイミングでお辞儀をするとさーっと持ち場へ戻っていった。 「…こんな家…ドラマとか映画の世界だけと思ってた…」   「引くだろ?」 「ううん。なんか偉くなったみたいでゾワゾワした…」 「親父もおふくろも何もしないからな。無駄に使用人がいるんだよ」 「でもここがあるから彼らは生きていられるんでしょ?ここからお金もらってるんだし」 「そうなるな。かなり厳しい教育を受けてきてる奴らばかりが選ばれている。必要以上の会話はしたことがない」 「…なんか…少し寂しいね。こんなに人がいるのに気配を感じない」 「そうだな。ここが書斎だ」 そう言うと店長は俺の手を取った。ノックすると部屋の中からいい声が聞こえた 「入れ」 「失礼いたします」 その部屋には威厳のある男性が二人と小さな男の子と女の子。そして店長によく似た綺麗な女性がいた 「久しぶりだね。藍玉」 「天河(てんが)も久しぶりだね。竜胆。俺の双子の兄だ」 「はじめまして。君の話はよく聞いてるよ。急に呼びつけちゃってごめんね」 思ったより言い方は悪いがチャラい… 「これが弟の琥珀(こはく)。隣が妹の透輝(とうき)そして…」 「父の玻璃(はり)。妻のリシアだ。突然のことで驚かせて済まないね」

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