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第58話

「別の理由?」 「天河をバイトさせていたのもその一環だ」 「え?」 「実は随分と前からうちのものの誰かがうちの金を持ち出していてね。そんな中でいくつか目星がついたうちの一つが天河の潜入していた店だ。そこは素性は明かさない代わりにほとんど違法である営業をしていた。望んでそこに居るものも勿論いるが君のように望まないままに従わざるを得なかった者も多くいてね。根源を断ち切るためにも調べ上げる必要があった…」   色々説明してもらえたが俺にはよくわからない。けど大きな力が働いてあの店は無くなりそこに関わり被害を受けた人たちのデータは全て抹消されたようだ。そして社会復帰するための支援を行っているそうだ。 「それはこっちの事情だけど…大切な家族になるかもしれない君が傷ついてきた過去を私達は消し去ってしまいたい。君が過去に怯えないように…自分なんてという感情に捕らわれないように…余計なことかもしれないがそうしたい」 「俺みたいな人間にそこまで…」 「…竜胆くん。君みたいな…ではなく君だからこそしたいんだよ。藍玉を変えてくれた君だから。勝手なことをしてすまなかった。…君と過去色々あった人たちとは会話をしてきた。恐らくもう君には何もおこらない。万が一があれば藍玉は勿論私や天河も家族みんなで君を救うと誓うよ。怖がらせて悪かった…天河も悪気が会ったわけではないが君を恐怖させたことは事実だ。いくらでも君に償おう」 「いえ…そんな…」 「…りんくん…ごめんね」 「大丈夫…です…藍玉さんの側にいてもいいですか?」 「あぁ。藍玉を一番近くで支えてやってくれ…宜しくお願いします」 天河さんと玻璃さんが深く頭を垂れた 「今日は泊まっていくといい。今食事も準備させているから」 「…ありがとうございます」 「それと…弟さんに会社をという話だが」 「はい」 きっと俺がどう出るか見ようと思い出た偽りなんだろう 「実はもう本決まりになっている」 「えっ!?」 「菖蒲くんは本当に素晴らしい人材でね。平社員として置いておくのは惜しいんだ。周りからの評価も高くてね。そのままにしておきたくないという声が多く上がっていたからその結果彼は独立することになった。君のことが心配でなかなか言い出せなかったのだと思うが…私は確信している。彼の成功をね。彼の好きなスタイルで好きに働けるように今は聞き取りの途中なんだ。おそらく彼は自宅で自由に出来る道を選ぶだろうけどな。君との時間をもっと持ちたいと言っていたから」 「菖蒲は…自慢の弟なんです…これからも…宜しくお願いします…」 「あぁ。こちらからお願いしたいよ。長く時間を取らせて悪かったね。ゆっくり休んで。天河。行くぞ」 「はぁい…ごめんね…りんくん」 「もう大丈夫です」 「でもね。さっき言ったことは本当だよ。俺りんくんのこと好きだった」 「天河にも渡さねぇよ」 「わかってるって…じゃあ…ね」 天河さんは少し微笑んで部屋から出ていった

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