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第61話
暫くして目覚めると隣には店長の姿はなかった。
今日起こったことは全て夢だったのかな?ぼんやりしていると扉が開いた
「…おはよ。竜胆」
「…」
「えっ!おい!大丈夫?どっか痛いか?」
焦ったように俺の元に来て俺の頬を伝う雫を拭う
「あ…ごめん。今日起こったことが夢だったかもしれないって思っちゃって…隣に店長いないし不安になっちゃった」
「ごめんな。そろそろ起きるかと思って食事取りに行ってたんだ。一緒にって言われたんだけど俺が…お前と二人が良かったからさ」
「ありがと。今日は久しぶりに母親が用意したんだ。口に合うといいけどな」
そう言って食べやすいように取り分けてくれた。
どれもあまり見ない料理だ
「これは」
「母親の生まれた国の料理。元々料理は好きなはずだけどなかなかする機会もなくて楽しそうに作っていたらしい」
「そうなんだね。いただきます」
どれも初めて食べるものばかりでびっくりした。
「おいしい!」
「よかった。俺も母の料理は好きでな。月一は母の作るものを食べる日って決まっていたんだ」
コンコンと控えめにドアを叩く。店長がドアを開けるとお母様がいた
「おはよう。竜胆くん。もう、大丈夫かな?ごめんね。天河が…」
「いえ。大丈夫です。俺がまだ本調子じゃないだけなので…天河さんには申し訳ないことをしました」
「…はぁ…可愛いわねぇ」
「え?」
「早くうちの息子になって。私ね。貴方に接客してもらったことがあるの!随分と前から貴方のファンなの。だから藍玉が連れてきてくれて嬉しかったわぁ」
「そうなんですか?」
「まだ藍玉がそこで働いてないときよ。あのとき私天河と琥珀の誕生日プレゼントを探していてね。どうしても一人で買い物に行きたくて屋敷を内緒で抜け出してきたのはいいのだけれど物が多過ぎるし売り場もたくさんあるしで悩んじゃって。その時お困りですか?ってどこかから戻ってきたどこかのテナントの美人さんがいたの。天河と琥珀のこと話したら参考までにって色々教えてくれたの。自分のお店でなくて年齢とか容姿とかどんな性格なのかとか聞いた上でお店を教えてくれてね。あなたのお店ではなくていいの?と聞いたら彼は素敵な笑顔でね、せっかくの誕生日プレゼントなんだから相手にお似合いのものがいいですよって言ってくれてね。安心してお買い物ができたの。お礼のお手紙を送ったのだけれどお名前がわからなくて。こうしてお会いできてすぐにあなただってわかったわ。あのときはありがとう」
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