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第62話
お母さんのことは申し訳ないがあまり覚えていなかった。けれど誕生日プレゼントで他店を案内したことはあの一度しかない。
歳の離れた兄弟で上の子は双子だけど一人の誕生日プレゼントはもう用意してある。けれど他の二人がまだだという。
たまたま三人が誕生日が同じだからいつも悩むと話していた。
いつもは旦那や他の人が代わりに用意してくれるけど今年は自分で用意したいと話していた。
上の子は天真爛漫で自分に雰囲気はよく似ていていつも人に囲まれているような子。下の子は引っ込み思案で優しくておっとりしたような子。
何が好きとかはよくわからないけどこんな感じはどうかなって何となくの想像はしてるのだけどこれと言って決め手がない。
その後容姿や普段の服装な色々なことを聞いた上でうちの店とはテイストが違うと判断した。
それで二人に合いそうなものをピックアップして案内したのだ
「あの綺麗な人…お母様だったんですね」
「良かった。少しでも記憶に残っていて。プレゼントを渡したときね、二人共喜んでくれて今でも使ってくれているの。まぁ私は勝手に出掛けちゃったから玻璃にすごく怒られちゃったんだけどね」
えへへと悪戯した少女みたいな可愛らしい笑顔を向けてくれた。
「こうしてまた、ご縁があって直接お礼もいえて良かった…ねぇ。竜胆くん。藍玉はね、器用だけど大切なものとなると途端ダメダメになっちゃうの。だからね、これからも支えてあげてくれる?」
「はい」
「良かった。お食事中にごめんね。じゃあゆっくりね」
「お母さん。ご飯すごく美味しいです、ありがとうございます」
「お口にあってよかった。じゃあね」
ヒラヒラと手を振って部屋を出ていった後ろ姿を見送ってもう一度箸を進める。
本当に美味しくて食欲はあまりなかったはずなのに完食していた
「ごちそうさまでした」
そう行って手を合わせると店長は微笑んで撫でてくれた
「片付けてくるからもう少し横になってな」
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