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第18話

言い方は悪いが、Ωを力で制するのは容易い。 本棚に押し付けた手首は折れてしまいそうな程に細く、きっと彼が目一杯暴れたとしても龍樹にとっては可愛い抵抗にしかならないだろう。 僅かに怯えを滲ませた大きな瞳は、龍樹から視線を逸らさない。 ざわざわと自分の中の何かが騒ぐのが、ただただ不快で。 ーーー少し脅かせば、 「首輪もしないで、こんな簡単に連れ込まれて、噛まれても文句なんて言えな…」 空いている方の手で、落合の少し長い襟足を避けてそっとその項に触れたその瞬間。 「…っ…」 古書の香りしかしなかった図書室に、ぶわっと甘い匂いが広がった。 ーーー少し脅かせば、もう近寄ってこないだろう。 そう思ったのだ。 Ωの発情期、もっといえば水樹の発情期に出くわしたことがある。 あの時もどうしようもない暴力的な感情が湧き上がった。 しかし水樹のそれとは全く違う。 室内に充満した落合のフェロモンの匂いに、龍樹は急速に理性が食い潰されていくのを感じた。 「たつき、く、」 ーーーコレが、欲しい。 クラクラ眩暈がするのに、意識は、欲望はハッキリしている。 全身の血が沸騰したかのように身体が熱い。 そっと項に触れた手を滑らせて顎を固定し、グッと上を向かせると、荒くなった落合の吐息を鼻先に感じた。 吐息は一層、甘い。 剥き出しになった白い首。 衝動的にそこに唇を寄せると、ビクリと落合の身体が跳ねて、フェロモンがより強くなった気がした。 「たつきく、まっ、…っはあ」 熱を帯びた落合の声。 それはあまりに甘美で、その声を上げさせているのが自分だと思うとひどく興奮した。 拘束した手を外すと落合は抵抗しようと龍樹の肩を押したが、その手に力はまるで入っていない。 全身から力が抜け落ちて、今にも崩れ落ちそうな落合の脚の間に片脚を入れて支えてやると、既に熱くなった落合のそれに触れた。 「んっ!あ、く…ダメ、待って…」 「なにがダメだよ、散々そっちが誘ったんだろ」 「ち、が…」 「違わない」 運命だと声をかけてきて。 待ち伏せなんかして。 こんなところまで付いてきて。 どの口が違うというのか。

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