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第27話
ふっと意識が戻ってゆっくりと目を開けると、いつもと違う景色に龍樹は少し混乱した。
(ああ、水樹の部屋…)
乱雑に本が積み上がっている自分の部屋とはまるで違う、スッキリと整頓された部屋。
水樹はそもそも物をあまり持たないので、同じ部屋の間取りなのにとても広く感じた。
一緒に寝たはずの布団はすっかり冷えている。
不審に思って時計を見れば時刻は既に11時近くて、龍樹はやっと覚醒して飛び起きた。
「あ、やっと起きた」
キッチンスペースからひょいと顔を出したのは、すっかり身支度も整えた水樹の姿。
着ているのは制服ではなく普段着だ。
龍樹の記憶が正しければ、今日は平日。
しかもよりにもよって。
「…1時間目の科学、実力考査…」
「うわぁ、それはご愁傷さまとしか言いようがない」
ていうか寝癖すっごいよ、と指をさされて、龍樹はがっくりと項垂れた。
「ごはんは?朝作ったのあるけど、もうお昼までいい?」
「…食う」
「じゃ温めるから待ってて。顔洗ってきたら?」
言うだけ言って、水樹はまたキッチンスペースに引っ込んでしまった。
あの様子だと水樹も学校に行く気はもうないのだろう。
龍樹もすっかり気が抜けてしまって、欠伸をひとつして頭を掻いた。
触れた髪の毛は指摘された通りあちこちに好き放題跳ねている。
これは簡単には直らないなとまた項垂れるのだった。
元々毛が細く柔らかいので寝癖はつきやすく湿気に弱いという大変面倒な髪質なので、梅雨の時期になると朝は余計な早起きが必要なほどだった。
いっそ頭からシャワーを被って乾かした方が早かったりする。
予想通りいつもより強固なそれをなんとか見れるようにして洗面所を出れば、丁度水樹が炊飯ジャーを開けて白米をよそっているところだった。
その後姿のある一点に、目が釘付けになった。
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