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第47話

「ん、んん、ふ…ぅ…」 やめろ、やめたい やめたくない、やめられない 止める必要が無い 目の前には落合の背。 ワイシャツは羽織ったままだが、ボタンは全部外したし、スラックスも下着も足首でもたついている。 落合がきっちり締めていたネクタイで口を塞いで片腕を捻って抵抗を奪い、なすがままになった落合の背は過ぎた快楽に震え、時折しゃくりあげていた。 突き出させた尻に自分の性器が飲み込まれているのを、どこか遠い場所から見ているような、そんな不思議な感覚の中に龍樹はいた。 「ん、んんんっ!っ、ふ、ぅ、」 「…先生、早漏?何回目だよ」 ハッ、と小馬鹿にしたような笑いを浴びせると、羞恥からか細い首が真っ赤に染まる。 そのうなじは、真新しい噛み跡が生々しく血を流していた。 執拗に噛み付いたせいで、酷い傷になってしまっている。 いくつもついた噛み跡の隙間から覗いた火傷の痕に、龍樹はまた酷い苛立ちを覚えて、再びうなじに歯を立てた。 充満するフェロモンはひどく甘いのに、口の中に血の味が広がった。 ガクガク震えている脚はもうほとんど力が入っておらず、龍樹が支えてやっと立っているような状態。 口も塞いでしまったから息苦しいのか、荒い呼吸が耳についた。 その姿にどうしようもなく加虐心が煽られる。 自分にこんな暴力的な感情があったなんて知らなかった。こんな、抑えられないほどの激情があったなんて。 知りたくなかった。 「なぁ、どんな気持ち?」 「っは、はぁ、あ、うあっ!はーっ…」 するりと落合の口を塞いでいたネクタイを外してやると、銀糸が糸を引いた。 自由になった気道で必死に酸素を取り込もうとするのを許さないと言わんばかりに再び攻め立てる。 「あ、んんっ!や、おねが、まっ、ぃやあ…」 「運命感じた相手に犯されんの、どんな気持ち?」 「た、つ、ぅあんんっ」 言葉とは裏腹に、龍樹を受け入れた其処はビクビク痙攣してその快楽の強さを物語っている。 過ぎた快楽を逃がすかのようにイヤイヤと頭を振った拍子に、うなじから血が滴り落ちて、再び火傷の痕が露わになった。 ー俺のものに勝手なことを 何処の誰が何時如何様にして付けたかもわからないその火傷の痕が、ひどく忌々しくて。 湧き上がる激情のままに小さな身体を犯して、その身体に印を上書きしたい。 ぐぐっと性器が膨らむのを感じた。 それは、αがΩを確実に孕ませる為のもの。 「や、だめ、やだ!龍樹く、あ、あぁ…」 精を放った瞬間、頭が真っ白になった。 涙が溢れたことには、気付かなかった。

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