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第55話
何より目を惹くのが、その隣で悠然と微笑んでいる青年だ。
一度だけ見かけたことがある。
そのあまりに常識離れした美貌に、思わず二度見なんて失礼なことをしてしまった彼だ。
その後龍樹と一悶着あったせいですっかり記憶から抜け落ちていたが、改めて近くで見るとまるで巨匠の作り物のようで、思わずほうと感嘆の息を吐く。
それに気付いたのか、ふっとこちらに視線を寄越すと、軽い会釈とともに微笑まれて。
バッと視線を逸らした先に龍樹がいて、なんとなく目の前で浮気してしまったような居心地の悪さを感じてしまい、1人でわたわたする羽目になった。
こうしていると皆普通の高校生だ。
自分が高校生だった頃となんら変わらない。
(ほんと、性差なんてバカバカしいな)
落合は少し微笑ましくなって、同時に少しだけ疎外感を感じた。
けれど龍樹には龍樹の人間関係がある。それは当たり前のことだ。
「じゃ、俺は先に行くね。みんな遅くならないようにね」
一応教師として言ってはおくものの、龍樹をこんな時間まで拘束したのは自分だし、全く説得力ないなと思いつつ。
そっと龍樹を盗み見れば、水無瀬に手を借りて立ち上がっているところだった。
そして落合と目があって、ごくごく軽い目配せをされたことがとても嬉しくて。
(あとで、連絡してもいいかな)
ポケットの中の携帯に追加された新しいアドレスに、胸を躍らせるのだった。
「せんせ、ちょっと聞きたいことがあるんだけど…明日の放課後付き合ってもらえませんか?」
1人先に寮に入った落合を追ってきた水樹に呼び止められるまでは。
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