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第67話

「先生、帰省はいつからするんですか?俺は終業式の翌日にもう帰るんですけど、一緒に来ます?」 バサバサバサッ!! 「…何やってんですか」 「や、その、…え?ごめんもう一回」 落合が豪快にぶちまけた期末試験の資料を拾いながら、龍樹綺麗な形の眉を顰めた。 先の中間試験では難しくしすぎてしまったが、今回は簡単にしすぎてしまったようでまたしても学年主任にはお小言を言われて。 でも今回は生徒たちだって夏休みの補修を回避しようと頑張っていたみたいだし。 ああもう授業なんかよりずっと難しいテスト作成… 「ああ、それとも俺が先に先生の実家に伺った方が」 「ストップ!ストップストップストップ!!全然全く理解ができない!!」 現実逃避しようとしたがもちろん逃げられるわけもなく。 落合が必要以上に大声を出したので、龍樹は益々眉間に皺を寄せてしまった。 「あんた俺の話欠片も聞いてなかったんですね」 「うっ…ごめん本読んでる龍樹くんの横顔大好きです」 「夏休み中にお互い両親に挨拶行った方がいいだろうからいつにしますかって言ったんです」 「スルーされた…て、挨拶?」 「挨拶」 「あいさつ!?」 「うるさい」 「ぶっふぁ!」 ベシィッと小気味いい音がして紙の束が落合の顔に叩きつけられた。 それは今しがた自分がぶちまけた資料。それはきちんとページ順に並んでいる。この短時間で一体どうやって。 しかしそれよりも今の言葉の方が落合には衝撃で。 「な、なん、あいさつ…!」 落合の頭の中に一つの映像が浮かび上がる。それは昔見たドラマのワンシーンによく似ていて登場人物はちゃっかり自分と龍樹に置き換えられていて。 高級住宅街の一角にそびえる、誰が見ても納得の大豪邸。 広い庭には色とりどりの花が咲き誇り、高そうな家具が並ぶ応接間のソファに座る自分。隣には龍樹、正面には厳しそうなご両親。 ガバリと頭を下げて、自分が放つ言葉はもちろん。

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