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第69話
(困った!!!)
翌日、終業式の後の職員室。
担任を持つ先生方がちらほらHRから戻ってきた頃になっても、落合は自分の机に座り込んだまま頭を抱えていた。
(ご挨拶…どうしよう新卒社会人バレバレの安いスーツしかないし、手土産…お金持ちのα様方に何をお持ちすれば…いやいやいやそれ以前に大切な息子さんを誑かしたとか言われても文句なんて言えないのに呑気に手土産なんて考えてる場合なのか!?)
「本気か水無瀬!?」
不審者よろしくブツブツ呟いていた落合の意識を覚醒させたのは、普段職員室ではあまり聞かないほどの大声だった。
声の出所を見やると、自然な薄い色の髪をした生徒が立っている。
あんな色の髪は、一人しか思い当たらない。
(水無瀬くん…と、あの席は田川先生?)
「本気です」
「よく考えろ、お前ならT大どころか海外の名門だって狙えるのに…」
「受かったとしても行かないんだったら受験する意味がないですから」
「お前にも事情があるのは先生だってわかってる…けどな、」
「どうにもならないものはなりません。失礼します」
「おい水無瀬!」
田川の制止をまるで聞こえなかったかのように一礼して、水無瀬は踵を返した。
出口に向かって、落合の近くを通りかかって…目が合ってニッコリ手を振られる。
立場的には落合の方が一応上なはずなのに、なぜか会釈で返してしまった。
次いで大きな大きな溜息が聞こえて、田川はボリボリと頭をかいた。
「今年の特進3年はどうなってるんだ!!」
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