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第107話

『水樹です』 簡潔な件名に、優弥は飛び起きた。 なんで。どうして。 もしかして龍樹くんが教えた?だとしたらなんて? 喧嘩したって伝えたとか。 それしか考えられない、このタイミングの良さ。詳細も伝えたのだろうか。きっと水樹にも呆れられる。 優弥は震える指でメールを開いた。 『メールしたけど面倒臭いから都合のいい時に電話かけてください』 なんとも水樹らしい一文と、メジャーな無料通話アプリの検索ID。 優弥もそのアプリを普段から使っていたので、水樹を検索してリストに加えると、早速電話をかける。 今来たメールだから、きっと出るだろう。 その予想は当たり、すぐに電話は繋がった。 『あ、先生こんばんはー』 明るい声。 なんだかホッとしてしまって、優弥の目からぼろっと大粒の涙がこぼれた。 「み、みずぎぐん…!」 『うわっ既にマジ泣き!?』 「うわぁぁあああぁん!!」 『え、ちょ、えええ…』 小さい子供のように電話口で泣き叫びながら事の詳細を告げる優弥に、水樹は根気強く聞き返しながら話を聞いてくれた。 どっちが年上なんだかわかりゃしない、と思いながらも、涙も言葉も止まらない。優弥はありがたく電話口で泣かせてもらったのだった。 『んーとね、まずね、先生と龍樹はまだお互いを知らなさすぎるからね、一つ龍樹について教えてあげるね?』 感謝してよねー、と水樹は一言付け加えた。その口調は明るくて、あまり物事を重く捉えていない様子。 きっと龍樹と山程喧嘩してきたからだ。 『あいつ気が弱いくせに意地っ張りだからさ、引っ込みがつかなくなっちゃうんだよね。きっと今頃トイレで半泣きだよ。あー情けない! 』 優弥の実家だし、トイレで半泣き、ということはないと思うのだけど。 その表現に少し笑ってしまった。 こういう、場を和ませる力は水樹の魅力の一つだと思う。 『聞く限りじゃ事情も知らずに一方的に責めた龍樹が悪いと思うし、本人も多分悪いと思ってるよ。でもここは逆に先に謝ってあげてさ、仲直りのきっかけを作ってあげて、俺ってなんて小さいんだ!て思わせておきなよ』 その方が楽だよ後々、という言葉は、優弥の心にスッと入ってきた。 後々。 そうだ、これからずっと一緒にいるのに、こんな時に喧嘩して蟠りを作ってる場合じゃない。 仲直りは、早い方がいい。

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