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6-4 ※ややR18
慌てて起き上がった俺は、自分が半分ずり下がったパジャマのズボンに右手を突っ込んでおり、そしてガッチガチになった己の分身をしっかりと握りしめている現実に直面することとなった。
見苦しい状態の下半身を隠そうと布団を探すが、寝ている間に蹴っ飛ばして落としてしまったらしく、ベッドの上には見当たらない。俺は仕方なく枕を股間に宛がうと全身で後ずさり、ベッドサイドでひたすら気まずそうな表情をしている鉄生からなるだけ距離を開けた。
「ああっ、ちょ、これ違うからっ!! 寝てた、そう、寝ぼけてただけだから! もー、バカだよね俺! ってゆーか朝だし! 生理現象生理現象!! ほら、鉄生もわかるでしょ!? しばらくしたら落ち着くからッ!! あははっ!!」
明け方、白み始めた窓の外からの光が部屋を青白く照らしこむ中、俺は鉄生に向かって涙目で苦しい申し開きを繰り返した。手中のマイサンはこの異常なシチュエーションのせいで一向に大人しくなる気配を見せない。
鉄生は頬をかきながらこちらから視線を反らすと、まるで己に言い聞かせるようにしてぼそぼそと呟いた。
「あー、うん、だよな……そりゃあそーゆーコトもあるよな……」
俺は顔面に引きつった笑みを張り付けたまま、鉄生の言葉にがくがくと頭を縦に振り続ける。
――そうです。こういうコトもあるんです。だから、できればちょっとだけ散歩にでも出て行ってくれないかな。
祈りを込めた目で見つめると、鉄生は一度大きく喉を鳴らして目をつぶり、ゆっくりと頷いてみせる。そして、何やら覚悟を決めたような表情でベッドの上に乗り上げて来た。
「ちょ、何で!? 何で来んの!?」
「いや、なんつーか……そのままじゃキツいだろーし、その手じゃやりにくいだろーし、手の怪我にバイキン入ったら不味いだろーし」
鉄生が一言ずつ言い進めるごとに俺は一歩ずつ距離を詰められてゆき、ついにはベッドの壁際の端まで追いやられてしまった。てかバイキンって俺の息子に対してどんな言いぐさだよ。
「……なら、オレが手伝ってやらねーと、って思って」
薄暗くてよく見えないが、鉄生の表情は真剣そのものというか何か妙に目が据わっているというか、これは不味いかもしれない。
「鉄生、こないだ無理やりしないって言ったばっかだろ!?」
下半身を隠していた枕をかなりの力で毟り取られた瞬間、鼻の奥からはっきりとしたメロンソーダの香りが湧き出るのを俺は感じた。途端にくらくらしてきた頭を押さえ、片手でしっかりと己のモノを握りこんでガードする。
「違うぜ、これは……なんつーか、“補助”ってゆーか、だから」
「だからも何も、こういうのは駄目だったら!! 補助は遠慮するから、ちょっとの間どっか行っててよぉ!!」
一旦収まりかけていた心臓が、再びどくどくと激しく脈打ち始める。呼吸はだんだんと浅くなり、空気に交じって大量のメロンソーダが俺の中に侵入してゆく。このままどれだけの間、俺は手を動かさないでいられるだろうか?
「いや、お前を一人にゃできねーんだって……約束だろ? ってか、どうして駄目なんだよ」
「どうしてって……っひ」
自分のモノを握った手を、そのまた上から鉄生の手に握りこまれ、俺は言葉の途中で小さく悲鳴を上げた。
「……ちゃんと教えてくれよ、何でこーゆーコトしちゃ駄目なのか、って」
「だって、そりゃ、こういうのは好きな人と……っ」
「洋介、オレのこと嫌い?」
鉄生の指が俺の手に絡み、ゆっくりと上下しはじめる。思わず腰がはねた。俺の指の傷に障らないよう、あくまで優しいタッチだが、それはもう手のひら越しの愛撫にほかならなかった。
「じゃないけどさぁ、付き合ってるわけじゃないしっ」
「じゃー、付き合ってるってことにすりゃいいんじゃねーの? だったら何の問題もないだろ?」
俺は頭を横に振りながら、己の手を擦る鉄生の指の動きにただ耐えた。呼吸は荒くなる一方で、手の内側ではもう取り返しのつかない状態になったモノがびくびくと脈打っている。
「ずりーよ鉄生……っ」
絞り出した声は、掠れ、上擦っていた。シーツに落ちる朝の光が緑色に染まっていく。もう限界だ、と思った。
「降参?」
ぐっと俺に体を寄せ、半分覆いかぶさるような形になりながら鉄生が囁く。俺は耐えがたい羞恥に震えながらも、黙って二度、三度と頷いた。
「じゃあ、手ぇ退けなきゃなぁ?」
鉄生は猫なで声でそう言うと、既に何の力も篭っていない俺の手を脇に寄せる。
「うあぁっ……」
完全に勃ちあがりきった己の分身が、白日のもと鉄生の視線に晒されている。たったそれだけで、頭がどうにかなりそうだった。
「いっぱい出せよ」
意地悪な笑い混じりに発せられたその言葉と同時に、刺激を待ちわびた俺自身を鉄生の武骨な掌が包み込む。荒々しいくらいの手つきで扱かれると、そこから脳天までびりびりと緑色の電流が走るような錯覚に囚われた。
「っあ」
イッた、と思った。鋭い快感が尾骨を貫き、腰ががくがくと震える。勢いよく放たれた精は鉄生の手の平に収まりきらず、シーツを汚した。しかし、鉄生は関せず手を上下させ続ける。
「お? ……まだこんなもんじゃねーだろ? え?」
その通りだった。数日溜めた男子大学生の性欲舐めんじゃねーよ。そう言ってやりたかったが、声は出ない。いつの間にやら部屋いっぱいにメロンソーダが充満し、俺はその中で成すすべなく溺れていた。
俺のモノは鉄生の手の中で硬度を取り戻すと、その後数回の吐精を経てようやく大人しくなった。
「いっちょ上がり、っと……なあ、洋介」
壁に凭れ掛かった体勢のままぐったりと弛緩する俺の頬を、鉄生がつつく。
「……ん」
「オレも限界なんだけど、肩貸してくれねー?」
ちょっと言っている意味が分からない。一体何のことだろうと困惑していると、鉄生はおもむろに俺の肩口に顔を埋め、深呼吸を始めた。
「ふぇ、何を……」
俺の問いに答えず、ただ呼吸を繰り返す鉄生。と、視線を下方に移した俺は、鉄生の意図を一瞬で理解した。
鉄生は、一心に自分自身を扱き上げていた。俺の匂いをオカズにして。
(……うっわぁ)
俺の目線の先で、鉄生のモノはみるみるうちにその質量を増してゆく。その光景に、俺はくぎ付けになってしまった。
普段ならば、自分のモノを上方からの決まったアングルでしか見ることのない男性器。が、今は他人のモノが明確な意思をもって自分に向けられている。その事実に、俺はぞくぞくと背筋を震わせた。
「洋介、ようすけぇ」
鉄生が譫言のように俺の名を繰り返す。俺は、ほぼ無意識にその頬に触れると、名前を呼び返した。
「鉄生」
刹那、体をぶるりと震わせると、鉄生は俺の胸元にまで届く多量の熱い精を放った。そして、そのまま俺に体を預け荒い息を吐いていたかと思うと、
「……愛してる」
消え入りそうな声で、一言、そう言った。
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