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はじめまして
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吹き抜けの高い天井から、豪華なシャンデリアが垂れ下がる。それは午後の陽射しを受けてあちこちに光を屈折させ、キラキラと輝いていた。
綺麗だなぁ…。
「中条双葉です。今日はわざわざ足を運んで頂き恐縮です」
「………」
「あ、秋ちゃん、ご挨拶っ」
「へ? あ、はい。す、すみません。立花秋です。こちらこそ、お招き頂きありがとうございます」
いけない。ついぼんやりと見惚れてしまった。
顔合わせと今後についての話し合いをと、中条家の別宅に呼ばれた。そこは本当に別宅かと思うくらい豪奢な建物で、僕達親子は緊張しっぱなし。しかも初めて会う僕の結婚相手の中条双葉さんは、想像していた以上の美丈夫だった。それこそ、天井のシャンデリアが霞むくらい。
「そんなに緊張しないで。私達は夫婦になるんですよ」
『夫婦』という言葉に、カァっと顔が朱くなる。本当にこんな人が僕の結婚相手なの?何か騙されているんじゃない?それとも、何かとんでもない趣味を持っているとか…。
横に座る両親を見る。駄目だ。完全にこの場違い感に飲まれている。ここは僕がしっかりしなきゃ。俯いて大きく深呼吸した。
「はい、すみません。とても緊張はしていますが、大丈夫です。それで、今後についてのお話と伺いましたが、どの様な…」
僕はしっかりと顔を向け、紅茶色のキラキラした双葉さんの目を見ながら、来訪の目的について問いかけた。
双葉さんはそれはそれはうっとりする笑顔で僕を見て、低めの落ち着いた優しい声色で応えてくれる。
「では、私と秋さんの今後について、少しご相談をさせて貰ってもいいですか?」
「僕と、…中条さんの? 仕事のお話ではないのですか?」
てっきり会社の今後についてかと思っていたのに、どうやらそうじゃないらしい。
相変わらずにっこりと笑う双葉さんは、何だか考えの読めない雰囲気の人だ。
「秋さん。よかったら少し、庭の散策をしませんか?外は暑いですが、風通しのいいガゼボの下なら、然程居心地は悪くありません。冷たい飲み物を運ばせますので、是非」
「は、…はい」
立ち上がり僕の側まで来ると、す…と手を差し伸べられた。少し戸惑ったけど、その手を取って誘われるまま庭へ出る。
緑が眩しい英国調の庭園は、とても手入れが行き届いていて美しい。処々に動物型に切り揃えられた低木が出迎えてくれて、調和の取れた美しさと遊び心の詰まった楽しいお庭だ。
小さな水路が小川のように造られていて、その水面が太陽の光でキラキラと跳ねる。チョロチョロという水音に鼓膜を擽られ、いつの間にか僕の緊張は何処かへ流されたみたい。
「よかった。少しは緊張が解れたみたいだね」
「…え?」
「ガチガチだったよ、さっきまで」
悪戯っぽく笑う双葉さんも、ぐうっと腕を上に上げて背中を伸ばしている。もしかして、この人も緊張してたのかな?
「ああいう堅苦しいのは苦手なんだ。けど、初顔合わせでだらしない所なんか見せられないだろ。あれでも結構頑張ったんだよ」
ああ。この人なら大丈夫だ。僕は何故だかそう直感した。自然と口角が上がる。
「改めてよろしく、秋さん」
「はい。こちらこそ、よろしくお願いします」
真夏の太陽みたいに燦々と降り注ぐ陽射しのような、眩しい笑顔だった。
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