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新婚旅行〜④

******  泥のように重たい身体。糊で引っ付けたみたいに開かない瞼。喉の奥から焼けるような熱い息が漏れる。  「…ぅ、んん」  「っ、秋。…しっかりしろ」  精一杯頑張って貼り付いた瞼を抉じ開けると、心配顔の双葉さんが真上から僕を覗き込んでいた。  「気が付いたか。…良かった」  「…ふ、たばさん。…ぼく」    喉が焼ける様に痛い。頭もガンガンする。  「風邪だよ。…まったく、無茶をしたな」  「………、っ、だ、って、」  「ああ、泣かなくていい。無茶をする程、楽しみにしていたんだよな。 悪かった。体調の変化に気付けなくて」  「ふ、ぅぅ、…ごめ、なさい…、双葉さん」  「いいんだよ、秋。そんなに泣くな」  ごめんなさい。ごめんなさい。双葉さんごめんなさい。風邪で、ごめんなさい。  あの時本当は、僕にもやっと始まったんだと思ったんだ。だって、話に聞いていたのと似た症状だったから。それなのに……  「ごめんなさい…、双葉さん」  「困ったねぇ。そんなに何を謝るんだ?旅行ならまた来ればいい。秋と出掛けられるなら、仕事なんかほったらかしたっていいんだから」  「…ぅ、…え? 、…それは、ダメですよ」  「いいんだよ。…それに、来年からはもう少し時間も取れるようになる。弟達に、幾つか会社を任せる事になったんだ」  「…え?、ほ、んと?」  「ああ。だから、秋は気にしないで、今はゆっくり身体を休めなさい。年が明けて落ち着いたら、次はちゃんとした新婚旅行に行こうな」  「っ、…あ、え?」  「秋、これが新婚旅行だと思ってただろ」  「ぅ…、あ、ぅ… …はぃ」  「ごめんね。秋に我慢ばかりさせたね」  「…う、ううん。ぼく、…ふっ、ぅぅ…ううん」    ふるふる頭を振って、違うんですって言いたいのに、我慢なんてちっともしてないって伝えたいのに、涙は後から後から溢れてくるのに、肝心の言葉が出てこない。    双葉さん、双葉さん。  こんな僕でもいいんですか?  双葉さんこそ我慢してませんか?  発情期すらない、こんな出来損ないで、  ……ごめんなさい。  

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