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助けて
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「それじゃ秋さん。一週間後に、また来ますからね」
「は、…はぃ。あ、ありがと…ございます。水沢さん」
オートロックのドアが閉まった。途端に心細くなる。
あれからひと月。父から処方された薬を止めた。貧血予防には別のサプリを服用している。
双葉さんにはまだ、何も言っていない。いつも通り変わりなく過ごした。…振りをした。
異変があったのは今朝だ。いつも通り会社へ行く双葉さんを見送って、洗濯をしようとランドリーボックスから使用済みのリネンを取り出した時、ぶわっとジャスミンの香りが香った。その瞬間僕の身体は自然発火したように熱くなり、ドキドキと激しい動悸に見舞われた。
立っているのも辛いくらい。え?…こんなに?ってほど熱くて熱くて堪らないのだ。それでも何とか水沢さんに連絡し、急いで発情期間中の食事を頼んだ。こんな姿を見せたら、嫌われちゃうかもと心配だったけど、水沢さんはいつも通りの優しい笑顔で、僕の気を紛らわせながら作り置きの食事を支度してくれた。
水沢さんには、予め僕の計画を話しておいてよかった。
後はもう、双葉さんの帰りを待つだけだ。
早く帰って来て。もう、本当に辛いよ…。
助けて… 双葉さん……
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「自宅まで!急いでくれっ」
急遽呼び付けた送迎車に乗り込むと、運転手の小松に声を荒げてしまった。
「…すまん、小松。気にしないで、安全運転で頼む」
午後の会議の最中だった。海外のエージェントを交えての重要な商談を控え、少しピリピリとした空気の中、その報せは届いた。
『社長、あの、奥様がヒートだと連絡が…』
何故だ?まだ早いだろう。計画では夏のバカンスに合わせ、秋の楽しみにしていた新婚旅行の後に発情期を迎えるはずだった。
今はまだ4月。あの薬さえ服用していれば問題なかったのに。…まさか、飲まなかったのか?…いや、そんなはずはない。秋が目の前で薬を飲む姿なら殆ど毎日見ていた。それに、1、2日飲み忘れたとしても、本格的な発情期など迎える事も無いはずだ。軽い発情状態にはなるが、それも吐精してしまえば収まる程度。
あの温泉旅行の時も、正月明けのあの夜も、それで乗り越えて来たというのに…。
「社長、もう直着きます。…早く奥様の所へ行ってあげてください。今頃きっと、心細くされていますよ」
小松の所も、確かオメガの番だったな。
「…ああ、そうだな」
そうだ。来てしまったものは仕方がない。今はただ、あの可愛い子の側に居てあげなくては…。
待ってろ、秋。
もう直ぐ帰るよ。
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