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巣作りΩと子作りα 〜side 双葉※
仕事から帰って来ると、家政婦長の有沢さんがいそいそとやって来て「秋さん、発情期が始まりましたよ」と教えてくれた。
すぐに秘書に連絡を入れ、明日からの仕事の調整を頼んだ。
「今回はお子さん、出来ると宜しいですね」
有沢さんは母の様な笑みを見せそう言った。
そうだな。そろそろ秋の望みを叶えてやらなければいけないな。
あの子はずっと言っていた。
『双葉さんの赤ちゃんが欲しいです』
まだ早いかとずっと遠慮していたが、俺ももう36歳になる。子供の一人や二人、本来なら持っていてもいい歳だ。
秋と結婚してそろそろ3年。番になって2年経つ。あの子の為にも、オメガの本望を叶えてやるべきだろう。
ーーだがしかし。
本音を言えば、まだまだ秋と二人っきりでいたいとも思うのだ。
何しろ18年もの長い間、この手に囲い込むのを我慢してきた。それがようやく手に入り、慈しみ可愛がれるようになってまだ2年。もっとあの可愛らしい姿を堪能していたい。自分だけのものでいて欲しい。そう願ってしまうは己のエゴなのだろうか…。
風呂を済ませ、秋の待つ寝室へと踏み入った。
ドアを開ける前から甘い香りが立ち籠めていたが、部屋の中へと入った途端後頭部に血が這い上がる感覚を覚えた。
そこに充満している甘い香りが全身に絡み付き、秋の待つベッドへと誘うように引き寄せる。
ベッドの膨らみがいつもより大きい?
秋の放つフェロモンに呑み込まれないよう、必死に理性を保つ努力が必要だ。
布団をそっと拓く。
キャラメルナッツの甘く芳ばしい匂いが一層強く鼻奥を刺激し、一気に脳髄を誘惑する。
その香りの中に、愛しい俺の天使がいた。
胸に湧き上がるこの気持ちを、何と表現するべきか…。
たくさんの服に身体を埋めるように丸まり、鼻先に俺のシャツを押し当てて眠っている。
ーーーこれが…、オメガの巣作りか。
噂には聞いていたが、これ程感動するものとは想像していなかった。
秋の身体に巻き付くシャツやタオルを一枚一枚そっと外し、怖がらせないように優しく、着ていたパジャマも脱がす。薄っすらと額に汗を掻き、頬を上気させた姿に欲情を煽られる。
ぷっくりと色づいた胸の飾りが誘うように勃ち上がっていた。この頃秋はそこを自分でも弄るようになったらしい。きっとさっきまで捏ねていたんだろう。左側だけやけに赤くなっている。なんていやらしくて可愛らしいのだろう。
「ごめんよ、秋。 ここが寂しかったんだね」
その赤くなった乳首に唇を寄せそっと口づけたあと、優しく口に含み舌でコロコロと転がすと、たちまち目を覚ました秋と目が合った。
「…ふ、…ふたばさん…?」
「秋…。 とても素敵な寝床だね」
そこを舌で可愛がりながらそう言うと、何の事かと不思議そうな顔をした。
どうやら無意識に巣作りしたらしい。
ベッドの中の様子に驚き、ほんのりと頬を染めた。 ああ…、なんて愛しいんだろう。
「足らないの…、双葉さんのにおい…欲しくて、僕、ぼく…」
そんな事を言ってくれる。それから……
「ふたばさん…のにおい、僕につけて?」
発情期特有のトロンとした表情で俺を欲しがる秋は、この世のものとは思えない程妖艶でありながら、どこか子供っぽさも残したアンバランスな魅力で俺を虜にする。
「匂いだけ? 他には?」
もっと欲しいものがあるだろう、と唆すと、縋るように「赤ちゃんが欲しい」と口にした。
ああ…そうだね、秋。
いいよ。 作ろうね、赤ちゃん。 その代わり少し我慢をしておくれ。きっとお前はまだ知らないだろう。本気になったアルファの子作りがどんなものか。
いつだって秋の身体を労るように抱いてきた。決して子供が欲しくなかった訳じゃない。確かに秋との時間を独り占めしたかったのも事実だが、本性を現したアルファを目の当たりにした秋が、怖がってしまうのではないかと、恐れる気持ちがあったからだ。
指で中を蕩かせ、むずがる乳首への悪戯に泣き出した頃、柔らかく解れた秘孔へと熱く滾った肉杭を突き勃てた。
「ぁ……あ……、はい、ってく、ん…んん……」
溢れ出す愛液がヌルヌルと絡み付き、その狭い隘路を奥へ奥へと突き進む。吸い付くような秋の熱いソコが、もっともっとと奥へと誘う。
「ふた、ばさ…ん、 ぅれし…」
「ーーっ、秋、 あきっ、」
苦しげに眉根を寄せる癖に、蕩けた顔は嬉しそうに微かに微笑む。
プツン…、と理性の糸が切れた。
秋の綺麗な両足を肩に担ぎあげ、細い腰を鷲掴み、本能のままに腰を打ち付ける。ゴツっと奥の壁を陰茎で叩く。秋の口から一際高い嬌声が上がり、その声にすら欲情を掻き立てられた。
泣き叫び成すがまま揺さぶられ、半分意識を飛ばした秋を抱きかかえて起こす。
杭を挿し込んだまま跨がらせ、ゆっくりと腰を落とさせる。秋のそこに己を突き勃て、奥の入口を抉じ開けた。
「う…っ、んん…、ぅ、くっ…」
それまで以上に苦しげに顔を歪ませた秋に「赤ちゃんが欲しいんだろ? なら少し、我慢をして」と告げると、色素の薄い茶色の瞳を涙で濡らしながら、そっと自分の腹に手を置いた。
「ふ…たばさん……。 僕の、赤ちゃんのお部屋、 ーーここ?」
可愛らしく首を傾げ臍の真下辺りに手を翳し、俺の尖端が突き刺さった隘路の奥を確かめるように撫でる。
「っ、そう、だよ。 ここに、今から俺の種子を入れるからね」
「ぅん、…うん。 うれし…、い、れて?」
涙でキラキラと輝く秋の瞳を、赤く染まっているであろう自身の瞳に焼き付けながら、その部屋の奥深くへと欲望の杭を打ち付ける。
丸みを帯びた双丘をグイッと鷲掴み、下から抉るように突き上げた。柔らかく拓いた子宮の入口が雁頸をきゅ、きゅ、と搾り取るように吸い付いて早く早くと射精を促す。
その刺激に抗い切れず、杭の根本がググッと膨らみ隘路の出口を塞いだ。
「出すよ、秋っ、」
秋の小さな頭を肩口へと抱え込み、白く発光し、甘ったるい香りがする項に牙を立てる。
少しでもオメガが受精の衝撃に苦しまないようにと、意識を分散させるアルファの本能だ。
子宮の中で尖端が弾け、終わらない射精はドクドクと勢い良く部屋を満たしていく。
全部出せと言わんばかりに内壁がキュウキュウと肉棒に絡み付き搾られる。
「んぁぁあ……っっ、!」
秋の歓びの声が高く長く続く。ビクビクと身体を痙攣させ、何度も何度も絶頂に昇り詰めた。
やがて根本の瘤が小さく縮まり、秋の中へ収まりきらなかった白濁が繋がった場所から溢れてきた。
秋は気を失い、ぐったりと胸に凭れかかっている。
その身体をそっとシーツの上へ横たえると、秋の中からゆっくりと己を引き抜いた。
拓ききった赤い窄まりからトロリと流れ出る白濁を押し戻すように指を中へと挿し込み、先程秋が撫でた臍の辺りに手を当てた。
「ん……、ふ、…ぅン……」
仔犬のように鼻を鳴らす秋の、涙で濡れた頬にそっと口づける。汗で張り付いた額の髪をかき揚げてそこにも唇を当てると、再びキャラメルナッツの甘い香りがアルファを誘う。
発情期はまだ始まったばかり。これから一週間かけて、お前のここを俺の種子で嫌というほど満たしてやろう。
薄い腹に当てていた掌を、ゆっくりと撫で回すように動かした。
「ン……、」
「秋……。 もう一度だ」
投げ出していた両足の間に再び腰を割り入れ、既に緩く勃ち上がり始めた陰茎を、未だトロトロと白濁を押し出し溢す入口に、蓋をする様に挿し込んだ。
「ん…ぁ…、あ、あ…? ふ、たば…さ、」
ゆっくり瞼を押し開けた秋が、なんでと問いかける様に視線を向けてきた。
「まだ…、ま、…って? ぼ…く、…んあっ」
「秋…、もっと欲しいだろ…、もっとたくさん、注いであげるよ」
緩く中を擦り、腰を回しながら奥へ奥へと杭を押し込むと、秋はまた背を弓なりに反り挿入の刺激に身悶える。陰茎が更に硬く太く滾り、尖端から堪えきれなかった先走りを溢れさせながら、既に濡れそぼっていた秋の中を更に濡らす。
「あぁ…秋、おまえの中に、ずっと入っていたいよ」
「あ…っ、ん…ぅン… ぼ、くも、ずっと、ふたばさ…、と、こうして…いたいです…」
「子供が生まれても?」
「は…、はぃ…、はいっ、 もちろんです…っ、だっ…てぼく、双葉さ…、の奥さん…ですよ? ンぁ…っ、あ…」
良かった…。それを聞いて安心した。
「秋…。愛してる、 …愛してるよ」
「ぁあ…っ、ぼ、僕も…っ、愛してます」
これできっと、お前は俺の子を孕むだろう。けれど忘れないでくれ。お前は俺だけのものだ。子供が生まれ母となっても、お前は俺の唯一の番で掛替えのない伴侶だ。
子供はやがて手が離れる。
俺にとって愛すべき相手はただ一人。
ーーーー秋、 …お前だけだよ。
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