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第2話〜もしも君が浮気したら〜

 今も一緒にいるよ。  真斗(まなと)……  僕はここにいる。どこにも行かない。  君の隣に立ってるよ。 『そのケータイ、まだ持ってくれてるんだね』  今じゃガラケーって言うんだろ?ガラパゴスケータイ。これ最新機種だよ、って君に自慢したのになぁ。あの頃は、ストラップじゃらじゃら付けて、さ?  結局、君がくれたストラップだけにしてけどね。  君以外の物は、必要ないから。  君が誕生日にくれたストラップを付けた僕のケータイ、今も大切にしてくれてるんだね。  ありがとう。  もう、どこにも繋がらない電話だけど。  透明な風がそよいだ。  君の頭上に。  僕を擦り抜けて。  僕はここにいる。  ずっといるよ、君のそばに。  でもね、君には教えない。  君が僕を見られない訳じゃないんだ。  僕がそうしてる。  君には僕が見えないようにして、そばにいるんだ。  僕がそばにいる事が分かったら、君が前に進めなくなっちゃう気がして……  心配症でごめんね。  僕の我儘、許して。  君をひとり、置いていったりしないよ。  姿は見えないけど、僕を感じて。  ほら……  チュっ  君の頬を撫でた風、僕が吹かせたよ。  そっと君にキスした。僕だって君に触れたいよ。抱きしめたい。  寂しい時は朝の光で包んであげるから、前を向いて……ね?  チリン  僕の声は聞こえないけれど、鈴を鳴らす事はできるよ。君がくれたストラップの鈴の音、きれいだね。  チリン……  もう一回鳴らしちゃった♪  チリン、チリン、チリン、チリン♫♫♫ 「ひっ!」  ……フフ、風もないのに鈴が鳴ってビックリしてる。驚いた君の顔、可愛くて面白いなぁ。  また今度見せてね♥  ほんとはね……  そのケータイ、君が忘れてくれる事を願ってるんだ。  幼い頃遊んだおもちゃみたいに、ある日突然、家の中で見つかって、そういえばあの時こんな事があったなぁ……って。  思い出して微笑んでほしい。  それまで忘れられてしまうのは、ちょっぴり寂しいけど。  でも思い出してくれたなら、僕は君の中にずっと住んでたって証だよね。  心の中、君の見えない場所に。  僕の居場所を作ってくれてたって、そう思えるから。  いつまでもここに立ち止まってないで、お行き。  次に僕が風を吹かせたら、君は進むんだ。  チュっ  額に……  うん、偉いよ。  あの日、僕達が上った石段、一緒に歩いていこう。  チリン  鈴が鳴る。  いつか君が僕以外の人を好きになったら、僕は嫉妬するのかな。 (もしもそんな日がやって来たら、化けて出るよ)  君の夢の中に……  朝起きて、君がそいつに話せないくらい、夢でイチャイチャするからね。  ねぇ、僕は信じてるんだ。  君がほかの誰かを好きになったとしても、最後に僕のところに帰ってくるって。  君と二人で歩いた、この(みち)。  僕達は夫婦になったろ。  お面を付けて、夫婦で歩いた面様の小路(こみち)。  あの頃の道はなくなった?  そうじゃない。未来に続いているよ。  僕達の歩いた道はずっと、ずっと、僕達のまだ知らない明日に……  だから君はもう少し、この世界でゆっくり遊んでおいで。  そうして再び僕と巡り逢った日、君の話を聞かせて。君が歩いた日の事。  そうして再び僕と君とで歩き出そう。  手を繋いで。  一緒に、ね……  それまでは見えないし、触れられないけれど、君のそばにいるよ。  チリン……  あ、そうだ。ストラップのお礼、まだだったね。  僕の誕生日を祝ってくれたお返し。ずいぶん待たせてしまったけど、君の誕生日のお祝いもしなくちゃね。  ちょっと待ってて。

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