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第8話 粗大ゴミからの脱却だけど。 1

男前が先に歩いて行くから僕は後からついて1体ワケなんだけど、凄いデカい家が建ち並ぶ住宅街に入っていく。 僕の世界とは場違いで、行きにくかった。 ……古き良き日本家屋の建ち並みで、その一軒一軒がデカいから。 男前の後ろを歩いていても、門構えが立派な家の前を通り横道に入ったとき、僕は異世界に迷い込んだ雰囲気になっていった。 こんな家に住んでる人がパトロンになったら、僕は一生楽できるかも!! と見ていたら、男前は裏口の小さな門に入っていった。 は?! 「この立派な家、あんたの家なのっ?!」 「ただ古いだけだ」 なんだよ、この僕が少し褒めてやったんだから少しは嬉しい顔しろよなっ!! それにしても、こんな常識外れな日本家屋に住んでんなら着物を着ていてもおかしくはないのかも、と僕は思った。 男前は家の勝手口を開けて入っていった。 「只今戻りました」 「紅葉、また朝帰りなの?いい加減止めてちょうだい」 中からスゴく上品そうな婆さんの声がした。 「すみません」 「思っていないことを口にしないでください。全くもうー」 二人のやり取りに入りにくかった僕は黙って見ているしかなった。 それでも男前は僕のことを忘れてなかった様子で振返ってきた。 「何をしている、入りなさい」 「お邪魔しますー」 僕が入った途端、着物に割烹着を着た上品そうな美人の婆さんが目を見開いた。 「紅葉、貴方……とうとう相手を連れてきてしまったの?!」 「昨晩の相手ではなく、途中のゴミ置場にいた少年です。『粗大ゴミ』にしたくはなくて拾ってきました」 なんだなんだ、この会話? 『連れてきました』?! 『昨晩の相手』?! 「あらあら、拾ってしまっては仕方がないですね。紅葉がきちんと面倒みなさい」 紅葉、この男前の名前? フウリュウじゃん。 どうしたらいいか分かんなくて、僕はらしくなく躊躇って立っていた。 「それにしても随分と若い少年ね」 この婆さんもぼくを『少年』と言ったな……僕は『美少年』だ!! 「居るところがなければ、暫くうちにいても構いません。未成年を放置は私にも出来ませんし」 なんだ良い婆さんじゃん!! 「ありがとう、俺捨てられて行くとこなくて困ってたんだ。でも僕は『少年』じゃなくて『美少年』だから」 あっ!! つい僕は本音が出ちゃったよっ。 すると婆さんは目を丸くしてから笑った。 「そうね、私も孫が出来ましたし『お婆さん』ね。貴方のぶんの朝御飯も用意しますから、待っていてね」 「本当?ありがとう婆さん!!僕は何でも好きだし嬉しいよ。美味しいの作ってねー」 「ええ、頑張ります。ですが……この家には赤ん坊がいますから、少しだけ静かにしてくださいね」 赤ん坊か、紅葉には子供が居るんだ。 ……ちょっと見てみたいかも。 こうして僕は暫くいれる場所を手に入れることが出来た。 だけどこの場所は僕には居辛い場所だとは、今はまだ思いもしていなかった。

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