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第17話 考えたくない。 2

「何をしている」 身体に響き渡るようなキモチイイくらいの重低音の声が部屋を充満して、僕は我に返った。 「もっ紅葉さんっ」 「なに?お仕事。金貯めろって言ったのは紅葉だよね」 紅葉は冷静に俊に近づいて抱き起こした。 「与えたヒカリへの仕事は『俊をお世話すること』だ。小雪が終わるまでは面倒をみなさい」 なんだよ……、せっかくのキモチイイ時間が台無し。 でも確かにここに居させてもらうんだから紅葉達の言うこと聞かなきゃだよね。 「……分かったって。ウリ以外の仕事だもんね」 「紅葉さん……」 にいちゃんは身を小さくして姿勢を正してる。 「この道を辞めたいのか」 紅葉の冷たい声ににいちゃんは頷きそうになっていた。 「辞めることないし、頑張れば?」 「……え?」 二人は僕の言葉に注目してるみたいだから、これは僕の主張を述べるべきだよね。 「そのにいちゃんは、この『美しい』僕に興味が出ちゃったんだから。罪は僕の『美しさ』にあるわけ。誘惑した僕が悪い」 「……」 「あ、あと俊も悪いよ。この僕に潮吹きしたんだ!!罪深いけど、俊の『僕を汚したい』気持ちもわかるから許すけど」 僕はあまり今深く考えたくない、考えるとまた潰れる。 紅葉は深い溜め息を吐いた。 「君、今日は帰って明日出直しなさい。修行中は邪念を捨てなさい」 そうにいちゃんに言った。 「申し訳ありませんでした!!」 にいちゃんは逃げるように出て行った。 「……ヒカリ、あまり挑発はするな」 「やだな、その言い方。僕は何もしてないし!!それより何か着て欲しいなら着替え貸して」 僕はただ汚れた服を脱いだだけ。 「着物なら好きな物を着て構わないと言った」 「えー、着物なんて普段着ないし分かんない」 「着なさい」 まぁいいや、考えるのは面倒。 僕はタンスを引き出しを開けて、浴衣を広げてから袖を通した。 帯なんて分かんないし、適当に結わいた。 引っ掛かってれば充分だよね。 「悪かったよ、紅葉。俊のことみるから、追い出さないで!!週末以外に拾ってくれたの、あんただけだし」 「……2度目はないぞ」 「分かったって!!……ほらー俊、僕に歩くとこ見せてよ。三歩以上行けたら、麦茶でサービスするぞ」 僕は出来るだけ暗いことは、今、考えたくないんだ。

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