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第23話 僕は聞いてほしかった。 4
「勿体ないな」
また声がした。
身体に響く重低音のキモチイイ声。
「悪いけど、ここにあるのは全部『醜い』粗大ゴミだから拾わないで」
「なら私もその粗大ゴミになろう」
バフッとソファーに座った感触が足元にあった。
「ウソつき紅葉は、僕が好きだよね。見た目が『美しいから』」
「そうだ」
本当は紅葉も僕を犯したい男と一緒だって何となく気が付いていた。
その『伊達眼鏡』で隠した目が、この数日間飢えているのも分かっていた。
あんたも俺を組み敷いて、暴きたいんだよね。
「あの家から離れたいのか」
「……辛いんだよ、優しくされるのが」
僕は目を閉じたまま話した。
飢えているのに僕に手を出さない、優しいあんたにも『捨てられる』瞬間が怖かったから。
「……僕の初恋と処女を奪われたのは小学三年、近所のオッサン。僕の家は厳しくて逆らうと殴られた。優しくされたことがないんだ」
「……」
「優しくしてくれるのは近所のそのオッサン。僕は見た目だけ小さい頃から『美しかった』、だからオッサンも僕に溺れたし夢中だった。……僕も優しいオッサンが大好きで、オッサンとのセックスが大好きだった」
「……」
「ある日学校から家に帰ってからオッサンのアパートに行った……またセックスして欲しい、キモチイイ思いを僕の身体に焼き付けてほしかった」
でも……でも。
「オッサンが首を釣ろうとしてた」
そう、僕は死んでいるオッサンを見つけた訳じゃなくて、『オッサンは僕を一目見てから死のうとしていたから、まだ生きていた』。
「……オッサンは『ヒカリを見てから死のうと待ってた』って言った」
オッサンは最後に見たのは僕だったんだ。
遺書なんて最初からなくて、言葉で言ってくれた。
「僕はオッサンを見殺しにした。……あんなに大好きだったのに」
僕とオッサンがしていたことはいけないことだと知ったら怖くて、自殺を止められなかった。
「オッサンの最後は笑ってた。……自殺なのに全然苦しそうじゃなかった、だから僕は止めなかったんだ」
優しくなんてされたくない、キツくていい。
……反動で父親の暴力ににまで勃起つようになった『キモチワルイ僕の身体』。
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