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3日目/2

 キツく結ばれたそれの先は、人の半身程が隠れる手すり壁の向こうに繋がっている。  暫く眺めていれば、縛り目がゆらりと揺らめいて…。 「ひっ…!!」  なんと手すりと繋がるロープに括り付けられていたのは、人の首だった。人の首といっても、生首ではなく肩から足まで全て繋がったままである。  青年の踵は床についているし、輪っかを作ったロープ自体がそこまで首を絞めている訳ではないとわかっていても……正気なんて保っては居られなかった。 「き…ききき君!何してるんだよ…今そこまで行くから、動かないで…大人しくしてるんだ!わかったね?!」  駐車場のたまたま空いていたスペースに自転車を放り出し、慌てて階段を上った。自分が住むにはどうかと思うが、このアパートのセキュリティが甘くて助かった。  例えばエントランスで暗証番号を入力しなきゃ入れないような高層マンションなら、直ぐに駆けつける事などできやしないだろうから。  エレベーターすら設置されていないそこで、ようやく上り切った3階の踊り場。息を整える間も無く顔を上げると、手すりに腰掛けた青年は笑っている。 「おっさん今日も配達お疲れ」 「そ…そんっな事より……早くそこ…降り……こっち、に…ッ」 「あっはは、爆焦りじゃんウケる」  どうやら今日は、飛び降りではなく首吊り自殺を図ろうとしていたらしい。ギリギリだったが、何とか見つける事が出来て良かった。 「こっから落ちたらお掃除の人大変そうだし辞めたんだー。吊るしときゃ回収も楽かなと思って」  吊るしときゃって…自身をまるでてるてる坊主みたいに。  夏だから冷えはしないが、草履も履かず裸足のままで、真っ白なTシャツはもし本当に宙吊りになっていたとすると…その、腹部が下から丸見えになるんじゃないかと心配するくらい裾が広がっていた。なんて華奢な身体付きなんだ、ちゃんと食事は取っているんだろうか。 「これから雨降るらしいからさ。…俺が晴れさせたら、おっさんも濡れねえじゃん?」 「本気でてるてる坊主になるつもりだったのか…」 「へへー、また止められちゃったな。残念」  真っ暗な空は、厚い雲に覆われている。確かに星の一つも見えないんじゃ、これから雨が降ると言われても納得がいく。  ……。  …だからって人間てるてるにお天道様が影響されるだなんて俺は信じてないし、微塵も望んでいないんだ!!

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