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4日目/1

 流石に疲れが出てきた。慣れない事をするだけでなく、睡眠時間も削られるのだから当たり前と言えば当たり前だ。  もう若く無いんだな。そう思うと少し寂しいが、新卒で入社した本業の人間とは違う新しい出会いを繰り返す毎日は、日々発見の連続であり、楽しくやれているのでまだまだ大丈夫だ。  昼休憩でちょっと湯を多く注ぎすぎたカップ麺を啜るくらいで、その他の大きな失敗はしていない。  きっちり定時に仕事を終え、冷たい家に一人。 使っていない部屋も増えたので、そろそろ引っ越しも考え時だ。  今日はどんな風に死にたがるのだろう、なんて普通じゃ考えられない思考が頭をよぎって仕方ない。  小さなアパートで出来る事といったら…飛び降り、首吊りの他に何が思い浮かぶだろう。彼の言い分を聞く限り、あまり近所に迷惑をかけるような死に方は考え難い。焼身自殺を図るにはお隣さんも上も下も大惨事だし、それ以外ってなると…。  って、これじゃ俺が死にたいみたいじゃないか。  睡眠時間を削ってまでノートパソコンで調べたのは、周りに迷惑をかけない自殺方法の一覧。そこかしこに散らばるサポートセンターの電話番号掲載ページに、自国の優しさを感じた。  深夜2時半、配達開始。  彼の言う通り今夜は小雨がパラついている。こんな日は、気持ち程度の防水対策でカッパを着て自転車を漕ぐそうだ。専用の機械を通してビニールに包まれた新聞を、崩れないようカゴへ押し込む。  だが、暫く道を走っていればいくらカッパとはいえ濡れてしまうのはしょうがない事だ。初めと比べてずっしり重くなった服は身体に張り付いていい気分では無いし、いつもよりうんと湿った空気の中での配達は初っ端から汗が湧き出て止まらない。  3軒くらい回ったあたりで遂にカッパを脱ぎ捨てれば、少しは涼しく思えた。  配達も終盤に差し掛かったアパートの前。髪の毛から滴り落ちるのが汗か雨かなんて区別もつかないのは俺が汗かきなのも大きく影響している。  流石に雨の日は外に出る気になれなかったのか、青年の自殺未遂現場に目をやるが影も見えない。今日はおとなしく眠っていてくれ。そう思い、ビニールに包まれたいくつかの朝刊をカゴから引き抜いた。すると──。 「…な、なんだアレは……」  見覚えのある白い影が、階段下で不自然な体勢で横たわっていた。  ……赤い海に、頭部を浸して。

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