「俺ね……っ、抱きつかれるの…あんま好きじゃ、ない」 「はぁ？だったらどうして…」 　汗臭いなんて言ってきた日も、君は俺に抱き締められて抵抗ひとつしなかったのに。そうやって拒否も出来ずにいたから、こんな状態になっているんじゃないのか。 　慌てて胸を押し、身を離す。 「あゃ…ア、」 「えっ……ご、ごめん」 　またやってしまった…。 　顔が赤いのはもうバレているだろう。頬と口元を手で覆うと、青年は可笑しそうに吹き出した。 「ヤナセにされるのは、何でだろ…嫌じゃないんだよね。…だから、いい」 「………そう、いうものか？」 「…ん」 　青年の言う事はよくわからない。でもそれは、昨日も一昨日も同じ事。彼の望みを聞くと言った以上、俺は抱きしめ続けてやらねばならない。 　再び頭を撫で、後頭部を支えて上半身を密着させた。 「ヤナセ…手ぇ貸して」 「？」 　右手を掴むと、彼はそれを自らの下半身へと誘って。張り詰めた熱いものの上へ導き、握らせる。 「もう俺…痛いし、ココ辛い。おねが…触って」 「……、わかった」 　下着一枚を隔てて押し付けられたそこは、少し小ぶりでありながらたっぷりと蜜を滴らせていた。俺だから反応してくれている…なんて事ある訳がないのに、この高揚感はなんなんだ。 　彼に操られている筈が、いつの間にか自らの意思で下着をズラし、動き始めた手は止まらない。 「──やッあ、ぁあ…ん！ヤナセ…ヤナ、あ…もぉ出……でぅ、出ちゃッ〜〜〜！！」 　パンパンに膨らんだ手の中のものは、勢いよく白濁を放つと数回に渡って痙攣を繰り返す。その度に腹部や腿は濡れていった。 　俺の背中とベッドシーツに爪を立てていた青年の指から、徐々に力が抜けていく。 「…サイアク。へたっぴ。別の意味で痛いし…激しすぎだし…」 「そ、それは…ごめん。ほんとにその……男相手は、慣れなくて…」 　出した事で少しは楽になったのか、顔つきも口調もはっきりしている。悪態をつくところまで戻ったのなら、もう心配は要らないだろう。 　近くに見つけたティッシュ箱を引き寄せ、青年の下腹部を拭き取っている最中だった。散々俺を引っ掻いていた指がYシャツの裾を指す。 「やば、精子ついちゃった。…今から仕事じゃんおっさん。どうすんのコレ」 「あー…一応ベストも持って来てるから隠れるし、問題ないよ」 「精子つけて仕事とかウケる」 「はぁ…」 　これなら弱っていた君の方が可愛げがあったかもしれないな。まったく。