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8日目/1

 体調不良なんて言い訳でズル休みするのはいつ以来だったか。  病院に車をとめて、面会時間になるのを待った。彼に直接聞けると信じて疑わなかった名を、まさかこんな形で知る事になるなんて。  会社こそ休みを取ったものの、日の出前のアルバイトまで休むのは申し訳なくてしっかり一走りしてきた…と、彼に伝えたら笑ってくれるだろうか。  この先伝えられる日は来るだろうか。  通りかかった看護師に挨拶をし、病室の引き戸を開けた。4人床のそこは、他の患者の面会に来た者もまだ居ないようで静寂に包まれている。  カーテンを開けば、日の光が差し込む暖かなベッドに彼…常葉(ときわ)青汰(しょうた)は居た。1人では読めなかった珍しい名は、“ときわ しょうた”と読むそうだ。  暗がりでしか見てこなかった上に、唯一日が昇ってから顔を合わせたあの時も、日当たりの良くない間取りだったからわからなかった。  …君はこんなに、美しいんだね。 「常葉…おはよう。調子はどうだ?暑くはない?窓のカーテン、閉めた方がいいか?」  返事がないのはわかっていても、話しかけずにはいられなかった。中途半端に彼を救い、いつ目覚めるかもわからず、目覚めた所で死なせてやれなかった事を許して貰えるかもわからず。  1日のうちのほんの数分、それも数日間話しただけの俺がここに居るのは場違いだ。だが、それでも君を放っておく事が出来ない俺は何処までも愚か者なんだろう。  もし、目を覚さないまま死んでしまったら…。考えるだけで、心が張り裂けそうだ。 「……っ、俺が代わってやれたらいいのに…常葉。常葉ぁ…返事して、くれ……っう、」  昨日もこうして丸一日中泣きながら居座り続けたものだから、最後の方は看護師も医者も呆れて見向きもしなくなっていた。  と、その時。 「おっさん質問攻めしすぎ。呼びすぎ。あと…泣きすぎ」 「へ?」  俺の汚い嗚咽とは違う、透き通った声色が降り注ぐ。  両手で覆っていた顔をあげると、彼は困ったように眉を下げて笑っていた。

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