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第5話

連絡できなくなって更に2年程過ぎてしまった。 俺の気持ちは変わらなかった… しーさんを忘れたくて他の人と関係を持ったりもしたけど忘れられるはずなかったんだ。 ある日の夜ひらりと花びらが落ちてきた。桜だ。空にはポッカリと綺麗な満月が浮かんでて…初めて会ったあの日を思い出した…あの日も満月だったんだ。しーさんに無性に会いたくなった… 「もしもし。しーさん?久しぶり」 電話に出てくれたことがとても嬉しかった。あの頃と変わらない声…あぁ…やっぱり好きだな… 「どうしたの?珍しいね」 「桜が綺麗だったから見に来たんだ。出てこれる?」 「…」 しーさんは無言だったけど男の声がした。優しそうな落ち着いた低い声だった… ドクリと心臓が嫌な音をたてた… 「しーさん?誰かといるの?」 「あぁ…うん…」 相手なんて作らないと信じてた…そんな訳ないのに…しーさんが寂しがり屋なのは俺が一番知ってる…ふっと息を吐いて少し冷静になる 「そっか…じゃあ無理させられないね。実はあのファミレスにいるけど…」 「引っ越ししたんだ。近くっちゃ近くだけど」 引っ越し…あの自治体はパートナーシップ制度を導入している…俺の嫌な予感は当たる… 「いいよいいよ!友達といるなら悪いしまた連絡するね」 「今から行くから待ってて」 「…待ってるね」 指定された待合場所へ向かい車を停める。ハンドルに額をつけた…もう自分に嘘をつくのはやめようって…今日こそは本当の気持ちを伝えるって…そう決意してきた…俺が振った理由を話せばしーさんは軽蔑するだろう…それでもいいと言ってくれるなら…決して離さないって…そう思ってたのに… 「…俺はバカだ…大バカだ…」 暫くするとあの頃のままのしーさんがやってきた… 色々あって車も乗り換えた…前みたいに綺麗ではない車内…特に助手席は汚れてる。人は乗せないけど仕事の道具を積んでるから。だから隣には乗せられない。あの頃と同じように助手席に乗ろうとしたしーさんを止める 「ごめん!助手席は乗せられないんだ」 そういうと淋しそうに笑った。それが何故かわからなくて首を傾げた 「恋人でも出来た?」 あぁ。そういうことか…隣に乗せる相手がいると思ったんだ…と言うことは…もしかしてまだ俺のこと…?だったら否定しなくちゃ 「そんなんじゃ無いよ。でもだめなの」 ちゃんと伝わったかな?窓の外を見るしーさんの表情は伺えなかった

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