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8.ハンドサイン

「ぅ……ん……」 ぐちゅぐちゅという水音が聞こえる。 ゆらゆらとした揺れ。 なんだか意識もふわふわしている。 俺は、いつの間にか閉じていた瞼を気だるく持ち上げた。 そこは、見慣れた家でも医務室でもなく、やたらと広い薄暗い部屋で、俺は長い髪の男にのしかかられるようにして犯されていた。 先程から続いていた水音が、自身から発されていたことに気付いて、俺は一瞬で青くなる。 ああ、そうだ。俺……。 事態を把握する毎に、胸が重くなる。 いっそ全部夢だったなら、良かったのにな……。 「隊長、お目覚めですか?」 声をかけられて、口付けられる。 思わず拒みたくなるが、ルスが盾にとられてるからな……。 深く口内に入り込まれて、仕方なしにその舌を適当に撫でてやる。 けれど、覚醒し始めた意識は、先程までの熱や疼きがまだまだ身体に残っていることを鮮明に伝えてきた。 ぅ……やべ……、気持ちい……。 「は……、ぁ……っ」 思わず視線だけでチラとルスを窺うと、ルスは俺に何か伝えたそうな顔をしていた。 ん? なん……だ? 「隊長……」 声をかけられて、ぎくりとイムノスを見る。 ルスばっか見てたら、こいつすぐヘソ曲げそうだかんな。 「隊長は、意識のない間も、私の体でずっと可愛らしく喘いでらっしゃいましたよ」 おいおい、こいつ俺が飛んでる間もずっとしてたってのかよ。 どーりで俺はこんなにドロドロにされてんだな? 見れば、俺の身体にはあちこちに精液がかけられている。 つかお前、俺が寝てる間にもイってたのかよ、変態か!? 「隊長……」 俺の内心の引きっぷりに気付かないまま、イムノスは俺の胸へと顔を埋める。 胸の突起を吸い上げられて、びくりと腰が浮きかける。 「ひ、ゃああっ!」 一気に息が上がる。 そこはよほど繰り返し摘まれたのか、真っ赤に腫れていた。 一度与えられた刺激が、じんじんいつまでも残るように感じる。 痛みと共に広がった甘い感覚が、じわじわ腹の底に集まってくる。 くっそ……この薬、いつんなったら抜けんだよ……。 こんなことなら、もうちょい感じてるフリしときゃよかったな。 そんなことを考える間に、イムノスは俺の胸の突起を舌先と指先で左右同時に弄りだした。 「あっ、やっ、ひあ、ぁあぁああぁっっ!!」 ぬるりとした舌先で転がされる感触と、指先でキュッと摘まれて、くにくにと捏ねられる刺激を同時に与えられて、身体が跳ねる。 マジか、こんな、胸って、気持ちい……――っっっ!! 「は、ぁ、やっ、んんんっっっぅあああああああぁあぁんんんっっ!!」 声が、止まら、な……。 ルス、ごめ…….ル、ス、……。 涙に滲む視界の端で、ルスが手だけを動かしているのが目に入る。 あ……。なんだ、っけ、あれ……。 「ぅああああっっ!!」 不意に歯を立てられて、チカチカと目の前に火花が飛ぶ。 「おや、胸だけで達してしまったんですか……?」 「――っっ……っっ!!」 ぎゅうぎゅうと締め付ける内側が、イムノスの形をはっきり伝えてくる。 くっそ……こんな、の、覚えたくもねーよ……っっ。 けど身体は俺の心とは関係なしに、イムノスにしがみ付いて離さない。 「隊長の身体は、よっぽど私が気に入ったようですね」 よくゆーぜ。 もう一度ルスを見ようとした俺の視線を、イムノスが追う。 あ、やべ。 「イム、ノス……」 イムノスに視線を合わせて、掠れた声で名を呼べば、俺の内側でイムノスが力を増す。 ……結構素直な奴だよな。 俺から目を離せないらしいイムノスに真っ直ぐ腕を伸ばせば、イムノスは顔を寄せてきた。 左腕の鎖は繋がれていたが、右腕だけは動かせるな。 イムノスの頭を抱き抱えるようにして、その隙にルスの様子を窺う。 ああ。あれハンドサインか。懐かしいな、確か……。 イムノスにべろりと胸元を舐められて、ぞくぞくと肌が粟立つ。 「ぁ……は……、ぁ……」 熱が背中を駆け上る。イったばかりの内側が、またうねる。 思い出しかけていたサインの意味が霧散して、焦る俺の内側を、イムノスが掻き回した。 「や、あ、やめっ……っっっ、く、ぅうあぁあっっ」 激しい快感に思わずイムノスに縋り付けば、イムノスは俺に体重をかけるようにして奥深くまで穿った。 「んんんっっっ!! んんんぁあああああっっ!!」 「ああ……、隊長……、隊長……」 イムノスは俺を繰り返し呼びながら、夢中で腰を振っている。 寄せ続ける波のような快感に、頭の中が真っ白になる。もう、このまま、何も考えずに、快感だけを追っていけば良いような気がして、俺は慌てて首を振った。 感度を無理に上げられているせいか、昂る毎に涙が溢れて止まらない。 滲む視界と蕩けそうな頭の片隅で、ルスをもう一度見つめた。 待って、て、くれよ……。 俺、が……助け……る、から……。 俺のナカで、イムノスのものが何度目かわからない怒張を始める。 「ぁ……、あぁあっ、く、ぅ、んんんんっっっ!」 ビリビリと突き刺すような痺れが快感になって溢れる。 くそ、まだ出んのかよ……。 ルスは俺を心配そうに見つめてる。 良かった……、俺のこと、まだ、心配してくれてんだ、な……。 ふと、ハンドサインの意味が、あの日の会話が、まだ若いルスの声とともに鮮明に蘇った。 ああ、若い頃のルスも、やっぱ、可愛くて、かっこいい、な……。 「隊長っっ!!」 不意にイムノスに抱き締められる。 どくりと内側に熱いものを吐き出されて、俺は嬌声をあげてのけぞる。 身体中が熱い。溶けて、消えてしまいそう、だ……。 ルス……。 ルスがその気なら、俺、も……。 白く染まりそうな視界。 そこにルスの優しい笑顔を思い描きながら、必死で踏みとどまる。

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