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女装、するのか?③
「尽くすって、今まで堪えてきた事、して欲しいと思ってたこと、言葉にしても良いって事だよな?」
「お、俺にか?」
「お前以外誰が居るんだ?」
当然だろ、と鋭い視線を送られた。
爽良は完全に俺をターゲットに定めたらしい。
俺を実験体にし、愛される術を学ぶつもりだ。
つまりはいつか、誰かに俺にしたようにするわけで……。
「いやだな」
思わずそうぼそりと呟くと、爽良が慌てだした。
「わ、悪かった。男にこんな事されても、気持ち悪いよな。すぐ離れるか、ら――」
「ああ、違う違う! ったく」
俺の『嫌』を変な方向に解釈したらしい爽良を腕の中に閉じ込めて、さらりと指を賭しても引っかかることのなさそうな髪にチュッとキスを落とした。
「じゃあこれから、お前が俺に何かを求めるたびに、そのレベルの事はしても良いとみなして俺も返していくからな? そう思って、覚悟した上でやれよ?」
「……へっ?」
やられっぱなしも癪だからな。
この条件なら、こいつも無闇矢鱈と俺を実験体にはすまい。
「な、なら……」
と、思っていた俺が甘かったようだ。
きゅっと唇を結んだ爽良は、ただでさえ近い距離を余計に近づけてきやがった。
そして、あ、と思った時には、唇の横にキスされていて。
「……っ」
これならどうだ? という挑発的な視線に、乗らない俺ではない。
すぐさま顎を掴むと上向かせ、同じく唇の横にキスをする。
「て、照れる、な」
へへ、とふやけるこいつが、可愛くって仕方ねえ。
んな無防備にしてると、唇にしてやろうかとか思っちまう。
「じゃあこれから、したい事、されたい事は我慢せずにしていく事にするな」
これは、もしかしたら選択をミスったかもしんねえ。
宣言された猛攻に、耐えきれる自信がない。
それでも頷く以外の選択肢がなかった俺は、やむなく首肯した。
「ほどほどに頼むな」
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