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女装、するのか?④
気づいたことがある。
爽良が女になりたいと言うのなら、俺はあいつを後ろめたく思うことなく好きになって良いのではないだろうか?
女だと認識しているのなら、性別の壁なんて気にせず、恋愛対象として意識してくれるのでは?
「そうと決まれば」
俺は、作戦を練る事にした。
決行は今度のデートの日。女としてあいつをエスコートし、完璧なデートプランで満足させ、ドキドキさせてやる!
――そうして『やってやる!』と意気込みながら迎えた、デート当日。
「ま、待たせた、な」
恥ずかしそうに俯きつつも近づいてくる爽良は、いつもは隠れている瞳を顕にさせ、肩を優に超すブラウンのウィッグをハーフアップにまとめていた。水色のキャミソールワンピースは腰の部分にリボンが付いており、女装とは思えない破壊力をしている。
「かわいい」
その姿を目にした途端呆気にとられ固まってしまったが、目の前に来て上目遣いに反応を伺われると、内に宿る衝動を抑えられるわけがない。
「わっ」
爽良を感情のまま抱き寄せ、周囲の視線から隠す。
ついでに爽良を無遠慮に見ていた奴らへの視線も忘れねえ。こいつは俺のもんだ、この可愛い生き物は今日俺が独り占めする予定なんだ。俺の許可なく見る事も許さねえ。
「り、りきっ、くるしっ」
「あ、悪い。可愛すぎてつい、な」
いけないいけない。周囲への牽制と爆発しかけた爽良への感情のせいで、力を込めすぎちまった。
と、慌てて力を緩めると、離れるなと襟元を握られた。
「か、かわいい、か?」
「ああ、何度もそう言って……」
「お、お前の好み、か?」
「……ああ」
好みなんてもんじゃねえ、一目見た瞬間『好きです付き合ってください!』と性急に言ってしまいそうになるくらいに大好きだ。
だが、いきなり親友にそんな告白を受けても困るだろうから我慢してるんだ。
我慢してるんだ、っから! そんな可愛くはにかみ笑いをするんじゃねえ!
へへ、と嬉しそうに笑う姿が見られるのは嬉しいが、そんなもん見ちまったら感情を抑えるのが苦しくなっちまう!
「行くか」
なので強引に爽良の手を取った俺は、足早に歩き出した。
この収まる気配のないドキドキを、出来る限り押さえつけながら。
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