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女装、するのか?⑥

 お化け屋敷の順番は割とすぐに回って来た。 「なあ、デートだろ? 腕、組もうぜ」 「え?」 「ほら」  腕を差し出すと、そこに爽良が遠慮がちに手を添えてくる。  今まで手を繋いでいたが、そろそろ限界だったんだ。  手汗が気になり、手を繋いでいたいのに離したい葛藤。  皮膚同士触れ合った所から生まれる熱は、心臓から生まれた熱と融合し、体全体へと広がっていた。 「次の方」  促され、爽良が鞄からチケットを差し出す。 「カップルですね。本日、カップル特典としてこちらの紐をお二方の足に巻き、最後まで外れなかったカップルには特典がございますが、参加されますか?」 「特典、とは?」 「近くにある温泉はご存じですか?」 「ああ、はい」 「その一回無料券です」  そう受付の人が言った時、爽良が腕を引いた。  自身が声を出し男だとバレるのを警戒しているのだろう。口を結びながらもキラキラと瞳を輝かせ、『行きたい!』と全身で訴える。 「いや、でも……」  乗り気の爽良に反し、俺は言葉を濁す。  こいつ、本当に分かっているのか?  温泉だぞ? 風呂だぞ?  カップル特典という事はそういう事を推奨しているのか?  身体の関係にない者どもよ、この機会にそういう関係になるが良い、ってか?  いや、それともただの心身リラックスを目的としているのか?  だが普通のカップルとは違い、俺たちは男同士。混浴を選択することなく、入るときは一緒、つまりは爽良の裸を見てしまう訳で……。 「んなとこ行ったら、襲っちまうぞ?」  と、こっそりと爽良にしか聞こえない声で言ってみた。  俺の言葉に耳まで真っ赤にしながらも、爽良は拒否ろうともせず、逆に俺の袖をキュッと引っ張る。 「やります」  それを見て、俺は絶対に特典を手に入れてやろうと決意した。 「これ、結構緩いのな」 「あ、ああ」 「大丈夫か?」 「あ、ああ」 「大丈夫じゃねえな」  互いの足に紐を巻き、腕に置かれていた手を再び手に導くと、中に入り暗くなった視界に早くも爽良がビビりだす。  足の紐は一回でもタイミングが合わなかっただけですぐに解けそうだ。  こんな難易度の高いゲーム、クリアした人はいないんじゃないか?  だが俺は今爽良と温泉に入るという思考に囚われていた。  襲っても良いと言うのだ、それなら少し、味見程度なら許されるだろ?  いや、許してくれ。ここまで必死に理性をかき集めているのだ、それくらいのご褒美は貰いたい。  と、いう訳で。 ――クリアの為にこれは、致し方ないのだ。 「わっ」  爽良の腰に手を回す。  手を繋ぐよりより密着した体勢は、正直役得だ。暗いから爽良の顔がはっきり見えないのが残念だが、ちょっとした仕草や雰囲気で、爽良の表情を予測するのもまあ、楽しい。

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