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外から見た2人 ②
――そして。
「オレ、女になりたい!」
ええ、ええ、ええ、ええ。僕も陰ながらあの場面を見ていましたとも。
桜の木の下、告白のド定番のあの場所で、別の桜に背を預け見守っていましたとも。
なんでかな~!? 何であんな変な言葉で告白したのかな!?
普通告白と言えば『好きです』のはずだろう!? 『付き合ってください』でも良いけどさ!
見てよ李樹の顔、あれ別の意味って捉えたよ!!
この場所に告白かもってウキウキが隠せずに来てたのに、一気にリアルに引き戻されたみたいな顔してるよ!
爽良、それだとジェンダー的な意味になるって早く気づいて!!
別の意味での告白になるって気が付いて!!!
と、心の中で叫びまくっていたのに、僕の願いは虚しくも届かなかった。
李樹と別れた爽良は、キョロキョロと僕を探していたので近づき、すると嬉しそうな顔に迎えられたのだ。
「お、オレ、李樹と付き合える事になった! 夢みたいだ!!」
いつもは隠れている瞳から涙がボロボロと零れ、思わずといった風に僕に抱き着く。
こんな所、李樹に見られでもしたらまた睨まれる。
でも感動に浸っている爽良の邪魔もしたくはない。
なのでキョロキョロと辺りを見渡し李樹がいないことを確認すると、付きたくなるため息を堪え、爽良の感動に付き合った。
さて、それからどうなったかと言うと……僕の受難は尽きる事がなかった。
付き合えたと喜びをかみしめる爽良と、『女になりたい』を文字通りに捉え、片思いのままだと思っている李樹。
奇跡的に李樹の女が今途絶えている事が唯一の救いか。
爽良の幸せオーラと気難し気に『女か……』と顎に手を当てる李樹の間にいる、僕の身にもなって欲しい。
正直、もう友達をやめたい。
勘違いを正したいのに、爽良の幸せをぶち壊したくないし、李樹にあの告白の場にいたと説明するのも面倒だ。最初に僕に爽良が『女になりたい』事について相談したと考え、その誤解から解かなくてはいけなくなる。
それにこれは第三者の口から言うのはいけないと思う。
さりげなくなら良いが、はっきりはダメだ。
(いや、そうか……さりげなくなら、良いのか――)
なら。
と、僕はひっそりと作戦を立て、決行する事にした。
「ねえ爽良、六月に男女逆転のミスコンがあるでしょ? あれ、爽良は出ないの?」
「へ? 何でオレが?」
時間は昼休み、三人で『屋上にでも行くか』との李樹の提案で屋上へ。
まばらにいる人の間に場所を見つけそこに座ると、僕は早速切り出した。
そう、その反応だよ。男たるもの女装は嫌でしょ? もっと拒絶して、抵抗感を見せて!
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