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外から見た2人 ④

「男装の理由は、聞いてくれないの?」  色気をプンプンに匂わせるてもさ、生憎もう用なしなんだよ。  次の作戦を練るのに忙しいから、解放してくれよ。 「ああはいはい、理由は?」 「雑だね……まあいいか。好きな人を振り向かせるため、だよ」  もう~、いちいち顔を近づけないでくれるかな?  ほら、誤解した女子が『キャー!!』って黄色い悲鳴を上げながらこっち見てくるでしょ。  そういうの、いらないから。  注目浴びるとか面倒臭いだけだから。  どうか早く開放してください。 「あ~、やっと行った……」  そして漸く僕から離れ「じゃあね」と手を振る生徒会長を見送ると、盛大なため息を吐いた。  あの人との会話は疲れる、出来ることならもうしたくない。  決めた、もう話しかけない、捕まえない。 「乙夜、生徒会長と知り合いだったのか?」 「へ? いや、たまたま通りかかったから声掛けてみただけだけど」 「そうなのか? な、何か、距離が異様に近かったから……見ててドキドキした」 「そうかい」  そういうドキドキは、是非とも全て李樹に向けてくれい。  あ~あ、何だかとてつもなく疲れた……ああもう、次次! 「なあ。乙夜の恋愛対象って、もしかして男か?」  恐る恐るといった感じでそう尋ねて来たのは、忘れ物をしたと教室に取りに戻った李樹を靴箱で待っている時だった。 「あれ、気付いた? あんまりバレないようにしてたつもりだったんだけど……」 「女に向ける視線が『全く興味なし』って徹底してるから、もしかして、って思って」 「さすが爽良、鋭いね」  その鋭さ、ぜひ好きな人にも向けられたら良いね。  靴箱に背を預けながら、心の中でそう毒づく。 「言ってくれれば良かったのに」 「言う? って言っても、僕はその事で悩んでないし、好きな人もいないし……」 「でも男が好きな人同士、色々話せるだろ?」 「爽良のそれは、李樹が特別ってだけで、普通に女も好きになれるやつでしょ」 「そうなのか?」 「長年の僕の勘がそう言ってる」 「そう、か……まあ関係ないか。オレはずっと、一人しか好きにならないしな」  その相手は、もちろん分かるよな? と目を輝かせる爽良に、「はいはい」と相槌を打つ。  良いね~、そんな恋。  僕も恋をして、甘酸っぱい青春を送りたくなってくるよ。  まあそのためには、好きな人から作らなきゃなんだけど。  でも僕の場合、色々と問題があるんだよな~。 「あ、李樹!」  忘れ物である明日提出の数学の課題を掲げ、李樹が僕らに合流する。  待たせたな、とポンと爽良の頭に手を置きながら、僕にチラリと視線を向けた。  その目は、今まで嫉妬から向けられて来たものとは比べものにならない程、冷たい気がした。

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