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外から見た2人 ⑤
――やらかした。
翌日、登校して一人になりたくてふらりと入った空き教室で、僕は頭を抱えた。
靴箱で李樹の変化には気付いていた。だがその理由までは分からなかった。
二人の間には誤解が錯綜している状態で、発言には気を付けなければならないのに。
そう後悔しながら、朝登校して早々にした李樹とのやり取りを思い起こす。
『昨日、何話してたんだ?』
挨拶もなくいきなりそう切り出した李樹の表情はさりげなさを装っていたが、目だけが笑っておらず、人によってはとても怖く思えてしまう人相をしていた。
『なに、って……僕の恋愛対象が、男って話?』
『……男、だったのか?』
『実はそうなんだよね~。まあ、今まで好きになった人はいないけど。あっ、でも安心して! 爽良を好きになる事は――』
『そう、か。だからあんな、嬉しそうな顔をしてたのか』
苦々し気に李樹の表情が歪められる。
……え?
ちょっと待って、これ、何か誤解してない?
何、嬉しそうな顔って。
そんな顔、いつして……。
(あ)
してた、してたよ、僕に嬉しそうな顔。
でもそれは李樹の事を話してたからであって、本当の意味で僕に向けられたものではない。
誤解はすぐに解くに限る。
時間が経てば経つほどややこしくなるものだし、ただでさえこの人たちの誤解はややこしい。
なので意を決し口を開こうと、顔を上げた。
だがそこには、誰も居なかった。
何のことだと僕が考えを巡らせている間に、いなくなってしまったらしい。
慌てて教室の外も見てみるが、李樹らしき姿はない。
当てもなくフラフラと歩いてみても見つかりやしない。
あれは絶対、僕の恋愛対象が男だと知った爽良が嬉しそうにしていた、つまりは爽良の好きな相手は僕、という誤解をしたに違いない。
まだ『女になりたい』という誤解を解いていないのだ、余計な誤解は増やさないでいただきたい。
「あぁあぁ……どうすっかな~」
ふらりと入った空き教室にて、机の間にしゃがみ頭を垂れる。
「どうするって、何が?」
「……っ!」
一人の世界に入っていた所に声を掛けられ、慌てて立ち上がり振り返りながら無意識に拳を向けた。
「――伊吹 」
「女の子に暴力を振るおうとするなんて、物騒だね」
「男の格好をしているくせに良く言う」
「君を振り向かせるための格好であって、ボクの心は女さ」
どうしてこんな所にいるのか、男装の生徒会長がすぐ後ろに立っていた。
顔の寸前の所で止めた拳を下ろすと、生徒会長――伊吹は詰めていた息を吐き体の力を抜く。
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