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外から見た2人 ⑥
爽良には『知り合いではない』と言ったが、伊吹とは知り合いどころではない。
実は、幼馴染だったりする。
中学辺りから色気づいた伊吹に告白され始め、断っていると何を思ったのか男装し始めた。
恋愛対象が男とは言っても、男の格好をした女子にまでそれは及ばない。
女からキャーキャー言われてはいても伊吹の肩は細いし、腰のくびれは制服の上からでも想像できる。
それに僕は伊吹が女の姿でいた記憶の方が長いんだ、今更流されるなんてない。
「意味がないってこと、いい加減気付いてくれないかな? 伊吹が男装の理由を『好きな人のため』なんて触れ回ってるせいで、いつ巻き込まれやしないかって冷や冷やなんだけど」
「乙夜がボクの事、『好き』って言ったらやめてあげる」
「ハァ、早く卒業できないかな~。面倒臭すぎ、特に人間関係」
「そうか、無視か」
無視するに決まってるだろう、こんな話。
そっちこそ早く僕を諦めてくれって話、いっつも無視するくせにさ!
「ってか、何学校で普通に話しかけてるの。他人の振りするって話、忘れた?」
「約束を先に破ったのは乙夜の方だろう? 昨日話しかけてきたじゃないか。いきなりだったから、心臓がバクバクしたよ」
「それはごめんだけど、僕はちゃんと他人の振りをしてたよ」
「ここは誰もいない、だから良いだろう? 好きな人とはちょっとでも一緒にいたい、そんな乙女心を分からないと、モテないぞ?」
「……誰から?」
「もちろん、ボクから」
「ならもう十分すぎる程だから必要ないね」
投げやりに机にどかりと座る。
ここは特別棟、朝からここに来る人なんていないし、静まった教室の外からは足音など聞こえてこない。
なので大丈夫だろうと判断し、学校といういつもはあり得ない場所で伊吹と対面する。
「で? まだ君の友達の誤解、解けてないの?」
「……っ、ああ、そうなんだよな~~! あの二人のクソ野郎!! 俺まで巻き込みやがって、どうしてくれようか……っ」
「口調口調、崩れてるよ。その一面はボクだけものなんだから、ボク以外には絶対に見せないでよ?」
「何が伊吹のもんだ、俺の一部は俺のもんだっつーの。これが悪態をつかずにやってられっかってんだよ」
「わお、相当溜まってるね~。ボクの好きな君がたくさん見れて、嬉しいよ」
「何が『嬉しい』だよ、変人め」
普段の少々大人しめな雰囲気を引っ込め、盛大に態度を崩す。
だがこの姿を知っている伊吹は動揺せず、逆に嬉々とした表情を見せた。
「やっぱり、好きだよ。君のそういう所含めて、全部」
「ハッ、言ってろ」
うっとりと見つめてくる伊吹に舌打ちする。
機嫌が悪い所に『好き』とか言われても響かねえんだよ。
普段も響かないが、より入って来なくなるって事に気付けよ、無駄なんだよ、全て!
ったく、どいつもこいつも思い通りに動かねえ。
せめて巻き込まないなら何も言わないが、何で皆して俺を巻き込むんだ、てめえらの事はてめえらで解決しろ!!
と、鬱憤を罵倒に変えた所で。
ふうと再び切り替えるため、僕は息を吐いたのだった。
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