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爽良の奮闘①
「あれ、爽良。そんなニコニコしてどうした? ってか、そんなうざい髪してるくせに嬉しそうな雰囲気が伝わるの凄いな。何があったか、お兄さんに話してみ?」
「……オレ、お前と同い年なんだけど。なんなら、お前より誕生日早かったはずなんだけど」
「雰囲気だよ、雰囲気。何つーか、弟ってーの? 愛でたくなるオーラが出てんだよな……お前って、上にいるだろ?」
「……ああ、いるけど?」
「んで、可愛がられてるだろ?」
「なんでわかるんだよ」
「だから、そういう雰囲気が出てるんだって」
例えそういう雰囲気が出ていたとしても、それを的確に当てられるって凄いと思うぞ。
と、オレは当てられてむすっとした表情のまま、クラスメイトである伊賀を見上げた。
オレは背が低い。だから、大抵の同性は見上げてしまう。
身長の伸び悩みに悩んでいた時期はあったが、この位置だと李樹は頭を撫でやすいらしく、よくオレの頭に手を乗せてくれる。
なのでこの身長も悪くはないと思う今日この頃、いつもの如く見上げると、李樹よりは低いながらオレよりは高く、まさに平均的な身長であり、優しいお兄さん然の雰囲気であるためそれを利用しこうして自分の事を『お兄さん』と呼びからかう事の多い伊賀は、にやにやしながらオレを見つめた。
「で、何があった?」
「何がって?」
「その顔の裏事情、教えてくれたら飴ちゃんをやろう」
「だから、子どもじゃないって」
「なんだ、大人の対応を求めてるのか? 分かった、今日の昼飯でどうだ」
「それ、大人か?」
「なに、もっと上を強請るだと? なかなかやるな……よし、自販機から飲み物を買って来てやろう」
「グレード下がってない?」
「友達として教えなさい」
「ついに情に訴えたか……」
大袈裟に頭を抱えると、「ほら」と伊賀はポケットから一口チョコを取り出した。
「そんな引き延ばされたら余計気になるだろ。これで手を打っとけ」
手に握らせようとしてくるそのチョコを伊賀の手に押し返すと、オレは指を口に当てた。
「秘密だ」
伊賀には悪いが、これは李樹の事も含まれる。
男同士の恋愛事情なんて、人を選ばなければ話すに話せない。
言いふらすような人ではないと思っているが、それでも李樹の了承を得ずして話すわけにはいかないのだ。
好きな人との秘密の共有、なんて甘い響きなんだろう……。
李樹はオレの恋人になったんだ、ずっと好きだった李樹が、オレのものになったんだ!
そんな事にもにやにやと頬が緩んできて、これ以上変な顔になる前にと「じゃあな!」とオレは手を振った。
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