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爽良の奮闘②
あの日、桜の木の下で待っている時。
オレの心臓はバクバクと高鳴っていた。それは今までのどんな緊張の場面よりも鼓動が激しくて、それが余計にその状況を実感させていた。
オレは、今から李樹に告白する。
恋人になれないかもしれない、いやなれる可能性の方が低いだろう。親友でいられなくなるかもしれない、もう話せなくなるかもしれない。
李樹からの笑顔も、何気ない優しさも、オレをからかいながらおかしそうに笑うあの顔も、全部失うかもしれない。
それでも、オレは先に進みたい。
だから、だから。
どうか、オレと――。
「オレ、女になりたい!」
テンパっていたオレは、ついそんな事を口走ってしまっていた。
頭では『好きです、付き合ってください!』という告白の定番が浮かんでいたのだが、どうしてこうなったのか……。
だがこれはもう貫き通すしかない。
最初からそう言おうと思っていた風を装うのだ、オレは断じて言い間違いなんてしていない!
(通じてくれ……!)
そう祈りながら、沸騰しそうな頭で会話を続ける。
願いが通じ、李樹はオレの言わんとしている事が分かったらしい。『よろしく』と言ったら『よろしく』と返って来た、つまりはそういう事なのだろう。
それに、先日行ったデートではキスまでしてくれた! しかも濃厚なやつだ!
それからそれから、キス以上のことも、少し……。
プラス、『好き』なんて言葉まで……。
オレは今、幸せの絶頂にいる!!
何気ない日常を過ごしていてもそれが顔に出てにやけてしまう。
嬉しい、嬉しい、幸せだ。
そんな言葉で、心が溢れる。
「李樹!」
だが、李樹は案外奥手だ。
女子と付き合いまくってたから、もっと積極的だと思ってたんだけど……いや、女子と付き合ってきたからこそか。
オレは、男だ。男と付き合うなんて初めてだろうし、女と比べてしまうのは仕方ないけど、せめて女に行かないように、『男だから』って理由で別れを切り出されないようにしなくちゃ。
「こっち、来てくれ」
だから昼休み、多目的室に誰もいない事を確認すると、オレは李樹の腕を引き、きちんとドアを閉めて机と机の間にしゃがみこんだ。
「おい爽良、こんなとこに一体なんの用――」
オレの動きに従いしゃがみこんだ李樹の唇をそのままオレは塞いだ。
李樹がまだ動いていたから位置が少しズレてしまった。
思うに、オレはキスが下手だ。
そりゃ李樹が初めての相手なのだ、下手で当然なのだが、その分李樹との経験値の差が目立つ。
突然のキスに驚いていたようだが、すぐにオレの頭の後ろに手を置いたかと思うと、自然な流れで舌を入れてきた。
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