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爽良の奮闘⑤

 少女漫画の当て、それはオレの家だ。  オレはそんな趣味はないのだが、兄の空牙(くうが)が少女漫画を集めている。というより、少女漫画も少年漫画も面白ければ読むし集める、そんな人だ。  少々暑苦しいから関わりたくはないが、この際仕方が無いと割り切り、オレはオレの部屋の隣にある兄の部屋をノックした。 「兄ちゃん、ちょっと漫画借りたいんだけど……」 「爽良!」  部屋のドアをノックしドアを開けた途端兄に抱き着かれた。頬を摺り寄せ、「爽良だ~」とペットの如く撫でまわされる。 「毎日会ってるし何ならさっきも同じテーブルで夕飯を食べてたってのに、何でこんな久しぶりに会ったような反応なんだろうな?」 「何を言ってるんだ、爽良が来てくれるのとこっちから行くのは違うじゃないか。さあ、兄ちゃんの膝の上においで」  強引な兄は、そのままオレの目的も聞かずベッドに座り、その上にオレを乗せた。  兄ちゃんはいつもこうだ。所かまわず抱き着くし、オレの人間関係やら学校であった事を聞いてくる。  オレはもう子供じゃない。成人してないから大人でもないが、こうして構われるような子どもでもないんだ。  なのに兄ちゃんは、いつもオレを可愛がろうとする。 「なあ、漫画借りたいんだけど」 「何の漫画だ?」 「……少女漫画、借りたい」 「何でまた……ハッ、もしや恋したから少女漫画で恋愛を学ぶ、とかいう鉄板ネタじゃないだろうな!?」 「鉄板だったのか?」 「否定しない……だと!?」  乙夜の提案は正規ルートだったのか、それなら安心だ、とうんうんと頷くと、兄ちゃんにくるりと体の向きを変えられた。 「誰だ?」 「ん?」 「お前の心を射止めたのは、誰だ?」 「誰って、兄ちゃんも知ってるだろ? 李樹だよ。オレたち今、付き合ってるんだ!」 「つつ、付き合ってるだと!?」  やっぱり、相手が男だから驚いたのだろうか。  兄ちゃんは偏見なんてないと思ってたんだけど……でも、家族だから、李樹との事はやっぱり分かってもらいたい。  だから変に隠したりせず、オレは笑顔でそう宣言した。 「あ、んのやろう、俺との約束破りやがって……!」 「約束?」 「いや、何でもない。李樹くんとはどこまでいった? キスはもうしたのか?」 「……あ、ああ」 「……ダメだ、うちの爽良が可愛すぎて怒りが浄化され……ないわな、やっぱり。次会った時どうしてくれようか……!」  李樹とのキスを思い出したら、思わず赤面してしまった。  俯き顔を隠そうとするけれど、向かい合っていては隠そうにも隠せない。  なのでもろに俺の顔を見てしまったらしい兄ちゃんは、変な事を言って「はぁ」と顔を覆った。

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