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爽良の奮闘⑥
「それで、少女漫画で勉強したいんだけど、いいか?」
「……そっちの棚にあるから、勝手に持っていってくれ」
顔を手で覆ったままずらりと並んだ棚の左下を指さした兄ちゃんに「ありがとう」と礼を言って、早速棚を見てみる。
オレは少年漫画しか読んだことがないから、少女漫画の良し悪しは分からない。
でも兄ちゃんとオレは割と趣味は合う方だし、兄ちゃんが持っているという事は、オレも好きになりやすい、はずだ。
なので少女漫画っぽいタイトルのものを何冊か取ってそそくさと去ろうとした、のだが……。
(あれは?)
何冊か少女漫画を抜き去ると、その奥にまた漫画が見えた。それも少女漫画かと思ってとりあえず抜き取ってみると、何だか表紙で男同士がイチャイチャしている。
これはもしや、族に言う男同士の恋愛を描いた漫画なのでは?
とパラパラとページを捲ってみると、やはりそうだった。
男同士でキスしてるし、わっ、待って、あ、あんなことまで……。
集めているジャンルが幅広いのは知っていたが、こんなジャンルにも手を出していたなんて。
こ、これは……借りるしかないだろう。
男女の恋愛よりも参考になりそうだし。
よし、とそっと兄ちゃんがまだ項垂れているのを確認しながらそれも抜き去り、そそくさと「じゃ、じゃあ」と部屋から出る。
もちろんその奥の漫画がない事がバレないように他の少女漫画で偽装した。
きっと暫くはバレないだろう。
でも念の為、早く読まないと……。
と、ドキドキしながらオレは、またその男同士のイチャイチャした表紙を見つめた。
「り、李樹!」
「なんだ?」
「えっ、えい!」
掛け声をし、オレは勢いをつけて李樹の膝の上に乗った。
今は選択授業である美術の時間だ。課題は風景画を一枚仕上げる事で、皆校内に散らばり、授業終わり十分前には美術室に集合する事になっている。
こういうのはサボるに限る、とどこかくつろげそうな所を探し出した李樹に付いて行き、オレたちは今、体育館裏に来ていた。
「どうしたんだ、急に」
「お、重くない、か?」
「軽いくらいだ。もっと食べた方が良いんじゃないか?」
「り、りき、くすぐった……っ」
体育館裏にある小さな階段に腰かけた李樹の上に乗ると、オレの腹を李樹がくすぐりだした。その手から逃れようと体をねじり、いや違う、と逆に李樹の手をがっしりと掴む。
「なんか……触れてるだけで、心地良い、な」
李樹の手を取り、恋人繋ぎにしたり手を合わせたりといじってみる。李樹の手は大きくて、一関節くらい差があった。
いつもなら『もっと大きくなりたい』と思うそんな場面も、李樹となら違う。オレの手を包んでくれる程大きな手、その手に触れられるのが、とても嬉しい。
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