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爽良の奮闘⑦
「もっと体重、かけても良いか?」
「ああ」
浅く座っていたのを、もっと距離を詰めたくて深く腰掛ける。
先日借りた少女漫画で、こういう場面があった。
男の膝に女が座り、互いにドキドキしてる、という場面だ。
いつも兄にやられているが、それが好きな相手だとこうも魅力的な行為だったらしい。
それを読んでからオレは試してみたくて堪らなくなっていたので、良い機会だと李樹の膝の上に乗る。
「り、りきっ」
「なんだ?」
「ど、ドキドキ、してるか?」
「…っ…ああ、壊れそうなくらいだ」
李樹の手を離し、オレは『本当か?』と李樹の胸に耳を付けた。
オレだけがドキドキしてるなんて嫌だ、李樹にも同じくらいドキドキして欲しい。
そんな願いの元、李樹の心臓の音を確かめる。
(あ……本当だ、鼓動が早い)
その音を聞き安心し、でも心地良いそのリズムをもっと聞いていたくて、李樹の背中に手を回す。
「お前は俺を、試しているのか?」
「試す?」
一体、何を試すって言うんだ? と視線を上げると……あまりの李樹との距離の近さに驚いた。
李樹とはキスしたことあるのだ、この距離の近さになっていた事もある。
だがそれはあくまでキスの為に近づいた距離であって、し終わった後は離れていた。つまり今は、終わりが見えない中近づいた事になる。
自分から仕掛けた事なのに今更ながらそれに気づき、逃げそうになる心を抑え、李樹の服を掴んだまま瞳を閉じた。
乙夜の言っていた事の実践だ。オレからそのままキスするのではなく、キスをせがむ。
「おっ、前は!」
叫び、荒々しく李樹はオレの頭を掴んだ。そのまま唇を重ね、いつもの如く舌を入れてくる。
だが、それだけではなかった。あの日、お化け屋敷に行った日と同じように服の下から手を入れると、オレの乳首をこねくり回す。
親指で押したり、人差し指と親指で挟んだり、引っ掻いたり、弾いたり。
バランスを保つため李樹の首に両手を回し、オレはそれを享受する。
「んっ、あっ、……りきぃ、きもちっ」
「黙れ、それ以上言うな」
「あっ」
息が、苦しい。
最近鼻から息を吸う事を漸く覚えかけていたのに、それさえもできなくなる。
ダメだ、気持ち良い。李樹からされる事は、全部がオレにとって『嬉しい事』だ。
切羽詰まっているようなその様子は、あまり口に出してくれない『好き』を伝えられているようだ。心の中の李樹の事を『好き』だという気持ちが李樹からの『好き』に触発され、熱く灯りだす。
その熱が体の疼きになって、下に集まった。
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