26 / 27
爽良の奮闘⑧
「李樹……こっち、も」
「爽良……けど」
「やっぱりダメか? こんな、男の象徴に触るなんて……」
「逆に、爽良は良いのか?」
「李樹が良いなら、良い」
ズボンの上から、膨れているそれに空いている右手を導いた。
これは女には付いていないもの、男と付き合っているのだと実感させるもの。
だけど、オレはどうしたって女にはなれない。
これからも付き合いたいのなら、これは避けられない事なのだ。
「んんっ!」
「爽良、顔上げろ。口塞いでやるから」
流石に声が少し大きくなってしまい、手を噛み誤魔化したものの、李樹に体勢を戻されまた唇を塞がれる。
李樹の手はズボンのチャックを外し、パンツを少し下にズラし手を上下に動かし始めた。
自分から導いたのだが、もちろん他人からされた事なんてない。
初めての感覚に余裕がなくなり、目尻から涙が一筋流れた。
「そんなに、気持ち良いか?」
「あ、ああ……もう、ダメだ……いき、そうだっ」
「良いぞ、イっても」
「あぁっ!」
李樹があまりにも優しい声でそう言うから、容易くオレは李樹の手に出してしまった。
はぁ、はぁ、と走った後のように息を荒げ、そんなオレの目尻に浮かんだ涙を唇で掬われる。
「は、早くて、ごめん」
「それだけ良かったって事だろ? お前の乱れた姿、最高にそそられた」
「……それ、は……良い事、か?」
「当たり前だろ」
「そうか、良かった……暫く、このままでいても良いか?」
「ああ」
ポケットからティッシュを取り出した李樹は、オレの出したものをふき取る。パンツやらズボンやらを元に戻すと、オレを腕の中で抱きしめてくれた。
多幸感に包まれる。
大好きな人の腕の中ほど、安心できる場所というのはない。
「寝るなよ」
「分かってる」
言いつつ目を閉じ、オレはまた李樹の胸に耳を当てた。
それはまだドキドキと高鳴っていて……嬉しくて、ふふと笑みを漏らした。
ともだちにシェアしよう!