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第2話

「ありがとうございます。なんとお礼を言っていいか」 連絡を受けて病院に駆け付けた女性の娘が頭を深々と下げた。 「いいってことよ。軽い捻挫で良かった。帰るぞ橘」 「あの、待ってください」 女性が白い封筒を差し出した。 「それでばあちゃんに旨いものを食わせてやれ。ふたりの娘たちと孫がなかなか遊びに来てくれなくて寂しいって話していたぞ。親が生きている時しか親孝行は出来ない。あとで後悔するより、今のうちにばあちゃんに親孝行してやってくれ。頼む」 女性に軽く頭を下げるとすたすたと歩きだした。 「なんで名前を知ってるのかって?じゃあ聞くが不良高校に偏差値80の天才がなんでいるんだ?」 「成績優秀者は学費諸経費すべて免除。アルバイトも許可制だけどやらせてもらえる。弁護士になれなくても食物科を卒業すれば栄養士の国家資格を受験できる。食いっぱぐれることはないから」 「噂には聞いていたが、やっぱスゲェーな。噂以上の頑張りやだな」 遥琉は初対面にも関わらず馴れ馴れしくて。頭をぽんぽんと撫でられ、思わずその手を払いのけた。 「褒めてもなにもでないよ」 「そうツンツンすんな。可愛い顔が台無しだ。なぁ橘、折り入って頼みがあるんだ。いつでもいいから連絡をくれ」 「ポケベルは持っていない」 「そうか待ってろ」 遥琉からもらったのはメモ紙じゃなく名刺だった。 「高校ニ年生なのに社長って?」 「生活のためにオンラインゲームの会社を仲間たちと立ち上げたんだ。親から生活費をもらえない。俺たちみたいなやくざの子どもはどこ行っても後ろ指を指され形見の狭い思いをしなきゃならない。生きていくためには自分らで稼ぐしかないだろう」 「遥琉兄貴」 「兄貴」 ひとりまたひとり。彼のまわりに集まってきた。茶髪にピアス、革ジャン、見た目、柄の悪そうなヤンキーばかりだ。

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