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第6話

昆さんは僕を【橘】じゃなくて【遥琉兄貴の嫁さん】と呼ぶ。ただでさえ昆さんの声は遠くまでよく響くから、回りの人がドキッとして振り返り、驚いたような表情で二度見、三度見される。 遥琉は男子からも女子からも好かれていて、休憩時間やお昼休みは自然と遥琉の回りに生徒が集まってくる。常に誰かがそばにいて、いつも明るい話し声と笑顔の花が咲いている。 「遥琉お兄ちゃんってカッコいいでしょう。優しいでしょう。曲がったことは嫌いでしょう。困っている人がいればほっとけない性格でしょう。喧嘩はめっちゃ強いでしょう。あとなんだろう。えっ~~と」 千里が指を折って数えた。 「ただの世話好きでお節介やきだよ。なんの取り柄もない、馬鹿真面目ながり勉をからかって面白がっているだけ」 「アタシが思うにそのふたつはお兄ちゃん限定だと思う。だって、お兄ちゃん、いずれは遥琉お兄ちゃんのお嫁さんになるんだもんね」 「なんでその事を知っているんだ」 「昆さんが教えてくれた」 「また余計なことを……」 目の前が一瞬、真っ暗になった。 「遥琉お兄ちゃん、女子に超モテモテだからライバルが多いよ。お兄ちゃん、応援しているから頑張ってね。おやすみなさい」 千里が手を振って自分の寝床である押入れに入っていった。狭いところが落ち着くみたいだった。

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